|
絹の国俳句ラリー
「絹の国俳句ラリー」が二十六日、六合村赤岩地区で行われた。愛好者三十六人がかつての養蚕業の隆盛ぶりを伝える町並みを歩き、地元住民と交流しながら思い思いの俳句を詠んだ。落語家で俳人の入船亭扇橋さんと俳人協会県支部長の蟻川玄秋さんが選考し、最高賞の俳句ラリー大賞には奥木温子さん(中之条町)の「水引草鞭しなやかに絹の里」が選ばれた。
|
受賞の喜びと俳句への
思いを語る奥木さん |
絹の国俳句ラリー大賞 奥木 温子さん(73) 中之条町四万
水引草鞭しなやかに絹の里
自然体で感動詠む
赤岩地区を訪れたのは友人と句作のための小旅行をした昨年秋以来、二度目。新鮮な空気を吸いながら歩くと、草むらに生えたミズヒキに目がとまった。「すうっと伸びて咲く様子が山里の風景に合っている。何てすてきなんだろう」。感動を素直に詠み込んだ。
知人の誘いで俳句を始めて約二十年。全国規模の結社「白しらおび魚火」に所属している。「遊び半分と言ったら言葉が悪いかもしれないが、一生懸命になりすぎると、いい俳句は作れない」。常に“自然体”を心掛ける。
ラリーには地元の仲間と四人で参加。いくつも句作した中で、自分が一番気に入った句が評価された。「大きな賞をいただいたので正直戸惑っているが、うれしいですね。これからも肩の力を抜いて俳句を楽しみたい」
|
作品の素材に使った
水車の前に立つ関口さん |
入船亭扇橋賞 関口 隆司さん(74)中之条町中之条
水澄めるシルクの里の水車かな
回転に情景浮かべ
「ここに来ると古里に帰ってきた気分になる」。表彰式後、地元の人から次々と掛けられる祝福の言葉に応えながら、笑顔で話す。
六合村は二十代のころ、教師として赴任した思い出の地。「ちんまりとしているけどまとまりが良く、素直な子が多かった」と振り返る。あれから半世紀、昔とほとんど変わらない地区に、景観を守ろうとする人々の努力を感じている。
本格的に俳句に取り組んだのは教員を退職してから。今回のラリーでは最初に目にした水車に引き付けられ、その穏やかな回転の中に「パッと情景が浮かんだ」という。
赤岩の魅力を深く理解しているからこそ、詠むことができた一句。「今後も赤岩の素晴らしさを世に伝えていってほしい」という願いが込められている。
|
ゆるぎなく糸はき終えてまゆになる
◎知事賞 野中のり子さん(58)前橋市堀之下町
稚蚕飼育所で飼われている蚕や繭を見たり、座繰りを体験した。夢中で桑を食べる蚕の姿が印象的できれいだと思い、蚕が繭になる不思議さを句に込めた。初めて訪ねた赤岩は、緑がいっぱいで昔のしっかりした家が立ち並ぶいい所だった。
赤岩のすべてが遺産
◎六合村長賞 高階 和子さん(69)高崎市浜尻町
ずっと来たいと思っていてやっと来られた。来て思ったのは「村全体が遺産」ということ。建物も養蚕も、道端に咲く小さな草の花さえも大切にしなければならない宝だと感じて、この句を詠んだ。思いがけず賞をいただいてうれしい。
木槿咲く粗壁厚き隠れ宿
◎草の花県俳句作家協会長賞 竹内 芳子さん(66)東吾妻町三島
結社などで月二回の句会に参加している。六合村は水が豊富ですがすがしい。二度訪れているが、今回初めて赤岩地区を詳しく見て回った。中でも感銘を受けたのが湯本家住宅。高野長英の隠れ宿にふさわしい厚い壁に、歴史を感じた。
赤岩に座繰体験白芙蓉
◎俳人協会県支部長賞 古川 陽子さん(72)前橋市上小出町
共同稚蚕飼育所で、上州座繰りの体験イベントが行われていた。ハンドルを回しながら、座繰り器で糸をひいていた祖母と和裁が上手だった母を思い出し、懐かしいと同時にうれしくなった。この句には、そんな思いを込めたつもりだ。
空蝉の葉先にゆるる山路かな
◎上毛新聞社長賞 安原 みかさん(82)六合村赤岩
柿の木の葉先に付いていたセミの抜け殻が風に揺れており、「落ちてしまいそう」とハラハラした様子を写生した。昔ながらの町並みが注目されているが、自然が豊かなのも赤岩の良さ。鳥や虫の鳴き声、草花など俳句の題材はたくさんある。
|
■主催 |
群馬県、六合村、赤岩重要伝統的建造物群保存活性化委員会、フィールドミュージアム「21世紀のシルクカントリー群馬」推進委員会 |
■共催 |
上毛新聞社、谷根千工房、富岡製糸場世界遺産伝道師協会 |
■後援 |
群馬県教育委員会、財団法人群馬県蚕糸振興協会、県立日本絹の里、シルクカントリーぐんま連絡協議会、
財団法人群馬県教育振興会、
群馬県ユネスコ連絡協議会、日本放送協会前橋放送局、群馬テレビ株式会社、財団法人文化財建造物保存技術協会 |
|
|
フィールドミュージアム「21世紀のシルクカントリー群馬」推進委員会
養蚕・製糸・織物などの歴史遺産を生かした群馬県の地域づくりを構想するため2005年、県内外の有識者8人で発足した。委員長は藤森照信・東大教授(建築史)。事務局は上毛新聞社内。「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録運動の一環で、昨年は日仏シンポジウムを開催した。 |
|
|