69・番外編(上)梁に割れ 加湿して防止試みる 掲載日2006/1/14
何カ所も亀裂の入った寝室の梁

 新築のマイホームで初めての正月を、私と妻、1日に74歳となった母の家族3人で迎えた。「来年は新しい家ができるから」と母に言い続け、六年越しで実現した前橋市での正月に、喜びもひとしおだ。雑煮を食べ終えると、母は冬の陽が入る窓際のいすに座り、「暖かくていいね」とほほ笑んだ。
  しかし、私の心の中はやや複雑だった。昨年10月に連載が終わり、一息ついたところに沸き起こったマンションなどの耐震強度偽装事件。欠陥マンションを購入した住民がどんな気持ちで正月を迎えたのかと思うと、同じマイホームを手に入れた者として、ひとごとではない気がした。
  年末年始は30日から3日間休めたので、31日に大掃除を行った。アパート時代の大掃除は手抜きもしていたが、自分の家となると力が入る。私は窓のガラスふきや換気口のフィルターそうじなどを行った。
  家の中を点検して驚いたのは、多くの梁(はり)に何カ所も割れが入っていたことだった。大黒柱にも深い亀裂が入っていた。柱にはあらかじめ切れ目を入れておく背割りが四面に施してあったが、効果がなかった。
  わが家は、柱や梁の構造材に無垢(むく)材を使っている。家が乾燥すると、木が収縮し、割れや反りなどが起こることは、工務店から聞いていた。しかし、妻は「実際にこんなに割れたところを見ると不安になる」と心配そうに話す。私も同じ気持ちだ。
  家は、県の杉百本家づくり推進事業で建てた。構造材には乾燥率20%以下の「ぐんま優良木材」を使っているはず。どうしてこんなに割れが生じるのか。「家の強度は大丈夫だろうか」―。不安を払しょくできないまま新年を迎えた。
  年明け早々に、工務店に電話で事情を伝えた。建築士は「梁に縦の割れが入ると剪断(せんだん)で大変なことだが、横に入った割れは心配ない」と説明した。
  プロが言うのだから、そうかもしれないが、やはり心配だ。新年に入ってからも、寝ていると「パキッ!」「パシッ!」と家の中で音がする。夫婦で「また割れたね」と会話している。
  乾燥が原因なら、加湿により割れを防げるのではないか。防止策を試みることにした。風呂は水を抜かないで、水を張った状態にし、戸を開けている。ぬれたタオルも干している(一夜にして乾いてしまう)。わが家の湿度は28―32%で推移し、1週間余りの試みでは、今のところ変化はみられない。
  インターネットで調べると、快適な湿度は45―60%。湿度が高すぎると、カビ、ダニ、結露の要因になり、逆に低すぎるとウイルスの活動が活発になり、インフルエンザなどの心配があるという。
  乾燥は健康にも良くないことが分かり、電気代はかかるが、スチーム式の加湿器を購入した。これで割れを防げるかどうか、推移を見守っていきたい。


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