67・読者の家づくり奮戦記(上) 遊び心ある空間確保 掲載日2005/10/15
3度目の家を榛東村に建てた只木さん
 「私の家づくり奮戦記」の連載が始まって1年余り。「私」の家のことばかり書いてきたが、家づくりは建てる人によって多種多様の形や思いがある。本欄に寄せられた「読者の家づくり奮戦記」からもその一端がうかがえた。今週から2回にわたり、読者のみなさんの家づくりの苦労や工夫のポイントを紹介する。

◎個性生かし無駄省く
  3年前に榛東村山子田に新築した只木信雄さん(61)は、老後の田舎暮らしを目的に、それまで住んでいた埼玉県から引っ越し、夫婦二人でゆったり、のんびりできる家を建てたという。
  「今回で3棟目なので、今までの失敗と不具合を参考に、人生総まとめのつもりで、間取り図、屋根形状、外観デザイン、室内の造作、設備、照明、材料など、すべて図面を書き、その他の希望は文章にまとめてた。自分が指示した通りの家が完成し、100パーセント満足している」
  よく「家は三度建てないといい家ができない」と聞くが、只木さんのように本当に三度も家づくりを体験できるとはある意味で幸せだ。私の場合は、おそらく一生に一度の家づくりだと思う。
  「ほとんどの来客が玄関に入ると驚く。外観と室内のアンバランスが楽しいという。外壁は真っ赤、サッシ枠は黒、内側は吹き抜けで間仕切りなし。和室は白漆喰(しっくい)壁、台所などにはヒノキ無垢(むく)材を使った。露天風呂も造った。建面積26坪で900万円だ」
  坪単価は約35万円。家づくりの経験と個性を生かしながら無駄を省いた低コスト住宅に仕上げたのはさすがだと思う。そんな達人でも施工業者探しには苦労したらしい。
  「見積もりを取るため、2社に図面を渡したところ、双方から『こんな家は初めて』だとか『こんな漫画みたいな家でいいのか』と笑われた。造れないならもう一度考え直すが、造れるならこのまま進めてほしいと頼み、安い方の大工さんにお願いした」
  三度目で満足のゆく家を建てた只木さんは、家づくりのポイントを次のようにまとめた。
  「職人というのは作業の途中で注文を付けられ、修正するのを嫌う人も多く、着工前にすべてを合意の上で書類にまとめたのが良かったのだと思う。自分がこの家でどんな生活がしたいのかを、笑われそうなことでも遠慮せず、格式ある流儀を気にせず、遊び心のある空間にしたのが住み良い家になった」

◎壁も天井も迷わず白
  「家づくりの苦労はまた楽しみの苦労でもあります」とお便りをくれたのは、渋川市の小黒鉄治さん。私も悪戦苦闘の末にマイホームを建てた今、同じ心境にある。
  「天井や壁紙の色で迷いませんでしたか? 私は白でいいと思います。壁材は釘くぎやビスがしっかり留まるといいですね。壁の絵、家具やカーテンが部屋をにぎやかにします。照明器具も彩りを添えます。結局、壁も天井も白地で良かったのです。何よりも住む人そのものが一つの色彩ですから」
  わが家のリビングは、壁に白い珪藻土(けいそうど)を塗った。しかし、床と壁の腰板、天井に木を張ったため、暖かみのある感じは出たものの、雨や曇りの日は部屋が暗くなり、照明が必要なこともある。
  「終わりにわが家に告ぐ。決して不動ではない地球プレート上で、いついつまでも厳として平衡を保ち踏みこらえてください」。小黒さんの家への愛情が伝わってきた。

◎お年寄りは畳が一番
  わが家の和室で足の悪い母が転倒したことへのアドバイスも引き続きいただいた。
  82歳の父親と同居するMさん(55)は「床材として畳を選んだのは間違いではない。冷たくて硬くてスリッパを履く床材はお年寄りには不向き。自分のスリッパを踏んづけて転倒することも多く、転んだ時には畳以上にけがをする」と板床の危険性を指摘。つえ、歩行補助器、車いすを使っても傷みにくい畳もあると教えてくれた。
  嬬恋村のHさんは、加齢で体が不自由な老婦人を訪ねた際の様子から「畳の部屋にラグを敷き、家具や調度品をうまく使って生活していた。調度品などがすてきで、部屋全体がおしゃれになると楽しいのではないしょうか」と提案してくれた。
  私の母は、デイサービスに行く際に必ず化粧をし、「こんな服でいいかな」と気にしている。「おしゃれ作戦」は、転倒とぼけ防止に効果がありそうだ。


前ページへ 次ページへ