66・消費者同士で情報交換を 施工業者選び、価格の判断 掲載日2005/10/29
わが家もやっと来客をもてなす準備が整った
 新築のわが家での生活もだんだん落ち着き、やっと来客に対応する心の余裕も出てきた。今月初めには、妻が茶道の会の友人2人を初めて家に招き、自慢のタイ風カレーを作ってもてなした。
  1人は結婚が決まったそうで、新築住宅への関心も高く「この家は外断熱?」などと質問し、すでに勉強中の様子。私も加わって場が盛り上がると、奥の和室から母がリビングに出てきて、いすにちょこんと座った。妻の友人が「いい家ができて良かったですね」と話しかけると、母はうれしそうにほほ笑んだ。
  このシーンを見て、私は、2000年から始まった家づくりで、一つの結果を得たような感慨を覚えた。
  「これはみんなに知らせなくては…」。土地の売買で不動産業者とトラブルになり、その態度の豹ひょ変うへんぶりを目の当たりにした。私たち以外にもつらい思いをした人がいるに違いない。私が体験したことを伝えることが、これから家づくりを始める人の役に立つかもしれない。そんな思いが、この連載を始める動機だった。
  施工業者選びも迷走した。家づくりでは、何もかもが初めての素人が、専門的な知識と豊富な情報を持った業者と対たい峙じする。雑誌やインターネットで仕入れた情報から工法や仕様などで要望を出しても、業者に「採用していません」と言われれば、それまで。何度となく、消費者の弱い立場を痛感した。
  「信頼できる業者をどう探せばいいのか」「家の適正価格はいくらなのか」―。この問題では、特に多くの読者からご意見をいただいた。正解はないかもしれないが、私は家づくりのプロセスを納得できることが最も重要だと気付いた。
  業者が建て主に対し、いろいろな段階で納得ゆくまでしっかり説明する。そのプロセスが信頼を築き、そこから導き出された価格が“適正”になるのではないだろうか。
  弱い消費者は連携することで、強くなれる。消費者同士が自らの家づくりの体験を情報交換する場があれば、業者の信頼性や価格の妥当性を判断する材料ができる。
  私はそうした団体やサークルに参加したい。新築後もメンテナンスや将来のリフォームが控えている。家について常に関心を持ち続けてたいと思う。妻も「これからは家に魂を吹き込みたい」と張り切っている。
  昨年7月11日に連載を始めて以来、多くの読者から、励ましのお便り、時には厳しいご意見をいただいた。独り善がりに陥りがちな体験記も、読者の目に鍛えられて続けることができた。取材先では「読んでますよ」と声を掛けられることも多くなった。記者として最高の栄誉で、とてもうれしい。同時に、なんとなく恥ずかしくもあった。

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