59・妻と不可侵条約締結 掲載日2005/8/27
ウオークインクローゼットの中に設けたDEN
 新築のマイホームを建てて、一番うれしかったのは、自分だけの小さな部屋を持ったことだ。男の隠れ家的なスペースは「DEN(でん)」と呼ばれ、住宅雑誌で特集されるなど、最近は人気があるようだ。DENは、英語で「(野獣の)巣穴」を意味する。
  家の間取りを検討した際に、妻が最初に「一人になれる小部屋がほしい」と独立した部屋を希望した。私も同じことを考えていたので、「それなら私にも」とDENを手に入れた。二人とも2000年の結婚後、共用スペースしかないアパートで生活し、お互いが少なからずストレスを感じていたのだ。
  妻は2階北東の角に約3畳の書斎を持った。本を収納する棚を工務店に造ってもらい、小学生から使っている机を持ち込んで、着々と自分の城を築いている。
  私は、2階の寝室北側に予定していたウオークインクローゼットの中に自分の居場所を確保した。もともと私のスーツが多く、その収納のために計画したクローゼットだったので、妻の協力も得て、スペースをやや広く取り、その一部をDENにした。アパートで使っていたソファと本棚を置き、雑誌や漫画を読んだりして、自分だけの空間と時間を楽しんでいる。
  家の完成後、お互いに無断でそれぞれの部屋に入らないことを約束した。夫婦といえどもプライベートな部分は大切にしたい。私が「男の隠れ家なのだから、勝手に出入りされては困る」と話すと、妻も賛成し、“不可侵条約”が締結された。
  しかし、私のDENは、その後、度々、妻の“侵略”を受けている。私が仕事から帰ると、妻は「洗濯した下着を入れておいたよ」などと何食わぬ顔で言う。私はその都度、「約束違反だ」と主張するが、いつも笑顔でごまかされている。

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