35・立ち小便に潜む危険 掲載日2005/3/12
1階トイレの小便器(左)と洋式便器。座り小便にも対応できる
 この連載の第32回で子供や成年男性の間で「座り小便」が増えているのに危機感を持った私が、わが家に小便器を設置したと書いたところ、箕郷町のTさんから立ち小便の危険性を指摘するお便りをいただいた。
  Tさんは同じ30代の夫と築5年の家に住んでおり、夫がトイレで3回ほど倒れた経験を持つ。夫は病院で「排尿失神」と診断され、倒れた時にけがをしないよう座り小便を指導された。この失神は排尿時の一時的な血圧低下によって起こる症状で、飲酒後や夜間に多いという。
  Tさんは「子供時代に豪快な立ち小便を存分に経験し、いずれは健康のために座って小便をしてほしい」と訴えている。
  家族の命、健康を守る家で、男性なら日常的に行う立ち小便に、そんな危険が潜んでいたとは…。座り小便に反対だった私にとって、“目から鱗(うろこ)が落ちた”瞬間だった。
  群大医学部講師で、循環器内科が専門の坂本浩之助医師によると、排せつに伴う失神や立ちくらみは排尿だけでなく、排便の際にも起こる。
  排尿の場合、ぼうこうに尿がたまった状態で我慢していて、尿を放出する。この時、医学的に「迷走神経反射」という現象が起き、一時的に血圧が下がり、脳への血流が減って意識が遠のく。
  通常は、体の中で血圧を維持しようとする働きが起こるので心配ないが、年配者や、糖尿病などで自律神経の働きが鈍っている人などは、その働きが遅れて、失神を起こしやすくなる。
  予防法として、わざと咳をすると、交感神経の働きが高まり、血圧を上げるようになる。座り小便のように、姿勢を低くして頭に血が流れやすくするのも予防になる。
  私も6月には40歳。介護保険料の支払いも始まる年代だ。今回のTさんの指摘のように、今までの生活では気にもかけなかったことでも、今後はいろいろな障害となってくると思う。自分たちの今後のことも考えて、あらためて家づくりを点検してみたい。

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