26・「いい家」に決意新た 掲載日2005/1/8
数カ月後には取り壊す予定の実家
 新年は、妻と一緒に沼田市の実家で迎えた。前橋市で同居する予定の母からは毎年、「家はいつできるんだい?」と聞かれ、「今年中にできるよ」と答えてきた。ついに5回目の正月。今年は「春にできるよ」と言うことができた。いよいよ夢がかなう年。夫婦で近くの神社へ初詣でし、「いい家が完成しますように」と手を合わせた。
  実家は、前橋市に建築中の家が完成したら取り壊すため、この家で過ごす正月は最後。思い起こせば、両親が家を新築したのは、私が小学4年の夏。初めて家に連れられてきた時は、うれしくて、2歳上の姉と競走して2階に駆け上がり、自分の部屋を取り合ったことをよく覚えている。
  あれから約30年たった。日本の住宅の寿命は平均26年という調査結果(1996年建設白書)もあり、その意味では、この家は平均をやや上回る築年数となった。
  引っ越しに備えて実家を整理していたら、たんすの中から家の契約書を発見した。木造2階建ての実家の延べ床面積は約24・5坪。請負者は沼田市中町の「沼田住宅サービス」という会社で、請負金額は410万円(坪単価約16万7000円)と記載されていた。この金額で新築できたかと思うと、まさに隔世の感がある。
  請負業者について調べてみたが、現在は電話番号案内に届け出はなく、当時の住所にもう会社はなかった。
  私は、両親がこの家をどんな思いで建てたのか、とても興味が沸いた。この1日で73歳になった母は「お父さんが1人で決めたから、よく分からない」という。父はすでに他界していて詳しいことを聞くことはできない。
  ただ、古い契約書にある父のサインを見て、私が昨年5月に契約書にサインした時のことを思い出した。父はきっと、私と同じように家族の幸せを願って、一大決心で家づくりに励んだに違いない。実家は取り壊すことになるが、その思いはしっかり受け継いでいきたいと思った。

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