12・長持ちする家を希望 素人の要望にプロの信念 掲載日2004/09/26
柱や土台に防腐・防蟻処理した現場(記事とは関係ありません)
 長持ちして何代も住める家を造ることは、家づくりの理想の一つ。木造住宅では、木材を腐らせない工夫や、シロアリを防ぐ対策などを講じることで、寿命を延ばすことができる。
 わが家が利用する「住宅性能表示制度」には、「劣化の軽減」という項目がある。壁の構造や床下、小屋裏の換気などにより、大規模な改修工事が必要となるまでの期間を延ばす、つまり家を長持ちさせるための各種対策を規定するものだ。
 その対策をどこまで盛り込むかにより、等級付けが行われる。最高の等級3は、大規模改修工事までの期間が3代、おおむね75―90年を目安にしている。この等級を巡り、私と工務店との間で意見が対立したことがあった。
 工務店が最初に示した等級は、建築基準法に沿った最低限の対策を盛り込んだ等級1。私は、少しでも長持ちする家が希望だったので、できれば最高等級にしてほしいと要望した。
 ここでネックとなったのは、外壁軸組み部分の木材に施す防腐・防蟻処理だった。地面から1メートルの範囲にある木部に、耐久性のある指定樹種(ヒノキ、ヒバなど)を使わない場合、等級3では、その範囲に薬剤処理が必要となる。
 工務店は「外張り断熱工法なので、断熱材の内側部分に薬剤を使うと、室内側に化学成分が出てきて健康に良くない」と薬剤を使わない方法を強く提案してきた。これに対して私は「薬剤を使うだけで最高等級になるなら、ぜひ使ってほしい」と訴えた。
 この時は、私も工務店の社長も主張を曲げずに緊張感が高まった。担当建築士が「お互いでさらに検討を」と割って入り、その場は収まったが、気まずい雰囲気になった。
 私は必死に情報収集し、構造用合板の代わりにセメント系の板材を提案。工務店もその他で対象となる間柱、筋違い、胴縁の樹種をヒノキに変更することにして、最高等級の規定をクリアすることができた。  今になって振り返ると、素人の無理な要望に対し、社長が主張を曲げなかったおかげで私や妻の健康を守ることができたわけで、プロの信念を持って対応してくれたことに感謝したい。  

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