9・悪しき慣行を排除 約款を自分で用意 掲載日2004/09/05
日弁連モデル約款が掲載されている解説本
 契約は、施主と業者が対等な立場で交わすのが前提だが、多くの場合、業者側の用意した契約書と約款(やっかん)が使われている。私は、土地購入時に懲りた教訓から、自分で用意した契約書と約款で工務店と契約した。
  「自分で用意した」と言っても、建築や法律の専門知識が必要な約款を自分で考えて書いたわけではない。日本弁護士連合会(日弁連)が、消費者保護の視点に立って作成した「日弁連モデル約款」を利用した。同約款は「消費者のための家づくりモデル約款の解説」(民事法研究会発行)に掲載されている。
  同書によると、多くの施工業者が使う約款は、日本建築協会、全国建設業協会など業界7団体が共同作成した民間連合約款がモデルで、請負人を手厚く保護する内容になっている。日弁連モデル約款は、施工者と施主が対等、平等な関係となるよう、悪(あ)しき慣行を排除している。
  私は同書を工務店に持参し、日弁連モデル約款の採用をお願いした。約款には、誠実な業者ならばそうすると思われる内容が記載されており、「―解説」には、「業者に断られた時は、むしろ契約を断るべき」とまで書かれていた。
  これに対して工務店は「現場監督が5件以上の現場を掛け持ちしてはいけないなど、お客さまのことを考えれば当然のことばかり」と、採用してくれた。あとで聞いてみると、工務店にとってこうした申し出は初めての経験だったため、社員全員で条文の一言一句まで確認したという。
  実際の契約では、監理者を誰にするのか問題になった。同約款は、工事が設計図通りに施工されているか確認する監理者の責任を明確化し、契約書に署名、押印を求めているからだ。
  私は工事監理に第三者の建築士を頼んでいないため、「建築確認申請書に記入した監理者と同じにしてほしい」と要望。結局、一級建築士でもある工務店の社長に監理者になってもらった。
  この場合、請負人と監理者が同一となり、モデル約款の本来の意図とは異なるかもしれないが、それでも同約款の意義は大きいと痛感している。

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