3・分からない住宅価格 知識を持って交渉に臨む 掲載日2004/07/25
  私と妻が初めてある施工会社から住宅プランの提案を受けた時、2人は言葉を失った。建物の見積額は約3300万円、坪単価にすると約84万円にもなる。「こんなに家は高いのか」とあらためて驚かされた。
  一方で、坪20万円台で豪華な設備を備えた住宅をPRする会社もある。「丈夫で長持ちし、健康に住める」家の適正価格はいくらなのか。
  新築計画では、2階建てで延べ床面積40坪(132平方メートル)を目安に、予算は建物2000万円、太陽光発電300万円、諸経費200万円と大ざっぱに設定。希望は施工会社に伝えていたが、超過額が大き過ぎるため断った。
  この会社は後に約2300万円まで金額を下げて提案してきた。最初の見積もりは一体なんだったのか。
  その後も多くの業者を回り、うち15社から見積もりを取った。金額を見て気付いたのは、業者の多くが、初めは予算を数百万円も上回る見積もりを提示することだった。
  冒頭の会社と同じように、交渉後の値引きを想定した上で、施主の反応を見ながら、少しでも高い価格で契約しようという意図が感じられた。
  初めから「出精(しゅっせい)値引き」の名目で数十万円値引きした上で予算額以上の金額を提示したり、提案の際に「うちに決めてくれればもう少し勉強します」と口頭で値引きをにおわす業者もいた。ある業者は「Hさんの紹介なので300万円安くしました」と言って2400万円台の見積もりを提案してきた。
  こうなると住宅の価格そのものが分からなくなる。施主がある程度の知識を持って交渉に臨まないと、業者の言いなりになってしまうのではないか。しかし、無理に値引きをさせて、手抜き工事をされても困る。
  ある機関に紹介されて訪ねた前橋市の建築家は「安くていい家なんてない。坪40万円の家は40万円の家、坪60万円の家は60万円の家だ」と住宅価格について明解に答えた。消費者が安いものを求めるのは当然のこと。そんな気持ちが分からないこの建築家の言葉に失望した。
  わが家の建築費は約2423万円で、太陽光発電、消費税を除いた坪単価は56万円余り。この住宅が高かったのか、安かったのか、今でも分からない。

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