50・ 交通上の位置付け明確に コウモリ的存在 掲載日2006/10/21
玉村町を早朝に出発、沼田市利根町の栗原川源流近くの皇海橋を目指す。自転車でも1日170キロ走ることができる=昨年11月

 昨年11月、「とりあえず20回」を目標にこの連載を始めた。途中からブログも始まり、読者の方々からの情報に助けられ、ここまで書き続けられた。佐渡島一周に挑んだり、読者の通勤に同行したりと、自転車で走りながら、次の題材を探す「まさに自転車操業」的執筆だった。
  1年たって実感するのは、自転車に追い風が吹いている―ということだ。昨秋に連載を始めた時に比べ、サイクリング道や街中で、自転車に乗る大人たちを多く見掛けるようになった。自転車をめぐる状況は、ゆっくりだが、着実に変わろうとしている。
  一方で、課題もはっきりしてきたように思う。
  先月下旬、80代の女性の方から「自転車で車道を走るのは不安。かといって、歩道は乗りにくいし、危ない。そういったことを取り上げてほしい」という意見をいただいた。
  日本では、自転車の交通ルール上の位置付けが非常に中途半端なままであることが、最大の問題だろう。自転車は歩道も走れるし、車道もOKな「コウモリ的」存在になっている。左側通行が原則なのに、けっこう右側の歩道を走っている自転車は多い。
  「サイクリング道は、自転車のためなのか。それとも散歩をする人たちのものなのか」という声も聞いた。本来なら、車両である自転車と、歩行者が同じ道路を利用するわけだから、何らかのすみ分け、分離が必要なのかもしれない。
  私個人は「車道にきちんと自転車専用レーンが設けられ、自転車は左側通行をきちんと守る」ことが自転車乗りにとって理想だと思う。歩行者と自転車、自動車が別々のレーンとなることが、お互いの安全のためになる。
  日本の道路事情を考えると、この案が、すぐに実現するとは考えにくい。だが、自転車に追い風が吹き始めた今こそ、自転車の交通ルール上の位置付けについて、自転車に乗る側から、積極的に提言したり、困っている点をドライバーや歩行者にも理解してもらうことが大切ではないだろうか。
(おわり)


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