43・ 健康維持に最適の運動 通勤で自然体感 掲載日2006/9/2
松井田町の勤務先病院近く。「元気ですか」とおじいさんに近況を聞く岸さん

 安中市原市の旧中山道、杉並木を岸大次郎さん(32)がロードバイクで疾走する。ヘルメットもジャージも黄色。ぴしっとしたレーサーパンツをはき、替えチューブなどの荷物は最小限。まさにトレーニングモードだ。
  岸さんは高崎市群馬町出身。大学卒業後、横浜で勤務医をしていた。今春、古里に戻って安中市松井田町の病院に勤める。
  「横浜では、交通量が多すぎて自転車に乗る気がなかなか起きなかったけれど、群馬はいいですよね、最高。自然の魅力に誘われて、自転車で走りたくなる」という。
  高崎市箕郷町の自宅から勤務先まで約20キロ。岸さんは体調と時間、気分で通勤路を選んでいる。最短距離のコース、遠回りして起伏ある坂道を走ってみたりと「自然」と対話を繰り返すように、自転車で大地を走る。急坂を上り、ごつごつした岩山を見て、澄んだ空気に包まれる。すると、気持ちが落ち着き、自然の前で自分が謙虚になっていくのが分かるという。
  8月末、岸さんの通勤に同行した。ロードバイクでもっぱら車道を走行、急坂をぐいぐい上る。私は息が上がってしまい、ついていけない。いつもは時速30キロ前後で走っている岸さんだが、この日は私にペースを合わせてくれ、ゆったり速度での通勤となった。
  走りながら岸さんが「とっぴもない発想だけれど、成人男性に自転車通勤を義務付けるくらいのことをすれば、生活習慣病を減らせて、医療費抑制につながると思うんですよ。肥満傾向の現代人に自転車通勤は最適の予防薬」と話した。
  健康のため、日常生活には適度な運動が必要だ。ところが、「医師や看護師が5分で着く距離を車に乗っている―。これでは、きちんと助言ができない。まず、自分から体を動かす暮らしをすることにした」と岸さん。実際、帰郷後、自転車通勤に加えビールを控えたこともあって体脂肪率が3%低下、17%になったという。


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