36・ 米国横断(下) 82日間で4200キロ走破 掲載日2006/7/15
インディアンの夫婦に話し掛けられ、一緒に記念撮影=ニューメキシコ州

 3月上旬のロサンゼルス―。小雨の中、佐々山厚さん(57)、葉子さん(58)夫妻=高崎市上中居町=はアメリカ横断旅行に出発した。降り始めた小雨は雪に変わった。82日間のうち、雪に見舞われたのは、この日と、標高2000メートル超のグランドキャニオン付近で、もう1日あった。
  横断旅行中、野宿したのは2回。キャンプ場のトイレ内にテントを張って、寒さをしのいだこともあった。キャンプ道具一式を持っていたので、州立キャンプ場もよく利用した。旅慣れてくると、メーンルートの国道沿いのモテルが手軽で快適なことが分かった。2人で1泊数千円程度だ。
  インターチェンジ近くにはモテル、スーパーマーケットが集積、街中は寂れつつあった。中心街の空洞化と、モータリゼーション―。日米共通の現象だということは、後になって気付いた。
  旅行中、厚さんは18回のパンク。同じコースを走ったのに葉子さんは1回だけだ。パンクの原因は、国道の路側帯に落ちているワイヤ入りタイヤ片だった。厚さんは「タイヤ選びは大事だが、路側帯からアメリカを知ることが出来た」と笑う。ルート40は、東西を結ぶ幹線道路。いかに交通量が多いかの裏返しだ。
  そして路側帯で見かけたのは、はねられ死んだ野生動物だった。大きいシカがごろんと横たわる。湿地帯近くではカメ。フクロウ、プレーリードッグ…。「野生動物が犠牲になっているのはかわいそうだが、アメリカの自然は豊かで、多くの動物が生きていることを実感した」(厚さん)という。
  今回の旅で最大の懸念は、葉子さんの腰痛だった。4月中旬、同じ町に5泊、回復を待ったこともあった。その後も薬を飲みながら旅を続けた。葉子さんは「薬の残量から逆算して、走れるところまで行った」と笑う。5月、ミシシッピ川を渡り、テネシー州入り。同月24日、ノックスビル到着、走行距離4200キロ。2人は帰国を決意した。厚さんは「トラブルや困難もあったが、当初の目的は果たせたかな」。


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