30・佐渡一周(上)激励や風に背中押され 掲載日2006/6/3
スタートを待つ参加者は、緊張感のなかにも余裕の笑顔が見えた

 日本一大きい島、佐渡。その外周を走るのだから、コースはほぼ平たんだろう。事前のわずかな情報で、そう私は思い描いていた。
  しかし、船から見る島影がだんだん近くなると、不安になった。大佐渡山地の金北山は標高1,172メートル。海岸線には切り立つ岩。大佐渡、小佐渡の2つの山地の間を国仲平野がつなぐ地形。とても平たんとは思えなかった。
 平野部に位置する大会会場から宿泊先まで、軽いトレーニングを兼ねて自転車で移動。ところが思いのほか、道にはアップダウンがあった。わずか10キロの民宿に着くと両脚に張りと疲労が出た。「あすはこの20倍も走るのか」と思うと、気持ちが沈んだ。
 自転車乗りにとって、上り坂、雨、向かい風ほどつらいものはない。まさに三重苦。大会当日はどんよりとした曇り空。出発前、ぽつり、ぽつりと雨粒も落ちてきた。どうやら最悪のコンディションになりそうだった。  最も長い210キロには575人が参加した。午前6時スタート、時間差をとりながら、ゆっくりと集団が動きだした。「競走ではなく、自転車を楽しむイベント」(大会本部)なのだ。
 とはいえ、走り始めると周囲につられ、ペースが上がる。日本海側の海岸線に出ると追い風が面白いように背中を押してくれた。時速38キロ、体験したことのない速さで自転車が進んだ。
 55キロ過ぎ、最初の難関「Z坂」に差しかかった。海岸から一気に標高差130メートルの岩山へ駆け上がる。「こりゃ苦しいなぁ」とつい弱音が出た。それを聞いた茨城の男性が「だいじょうぶ。62歳、孫3人の自分でも上れるんだから」と励ましてくれた。
 Z坂までは順調そのものだったが、追い風があれば、島の反対側では向かい風だ。小平博県トライアスロン協会長は「前半は抑えぎみ、後半まで体力を温存すること」と助言してくれた。この言葉の重みをかみしめたのは、午前9時すぎ、雨が本降りになってからだった。


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