《この人》国産絹の灯 絶やさず 碓氷製糸 高木賢さん
更新日時:2017年6月12日(月) AM 11:00
「58年の伝統をベースに、柔軟で機動的な経営で維持、発展させていきたい」
農業協同組合から株式会社に組織変更した群馬県の碓氷製糸(安中市松井田町新堀)の社長に先月、就任した。国内の器械製糸工場が碓氷製糸を含め2カ所だけとなった今、純国産の絹製品を守る使命に燃えている。
「品質の頂点を目指し、定評を得るのが最優先」と言い切る。海外と価格競争をするのではなく、最高規格「6A」の生糸生産で差別化を図っていく考えだ。「いい物は売れる」。就任早々、京都の生糸問屋から、着物メーカーとタイアップした新企画を提案したいとの打診があったという。
安価な輸入生糸の増加で繭・生糸生産量が急減し始めた1984年に農林水産省蚕糸課長、96年に農産園芸局長となり、厳しい現実を目の当たりにした。
そうした中で、2005年から10年間は大日本蚕糸会会頭として蚕糸業振興に尽力。14年に「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産に登録され、国産シルクの需要が増えたのを好機に、養蚕の新規担い手育成や繭の増産支援を強化した。同会と県の支援策が奏功し、1983年度から減少し続けた県内繭生産量は2年前に増加に転じた。
株式会社には県や安中、富岡両市も出資する。期待を背に、絹製品の開発など多角的な経営に取り組んでいく。「養蚕農家にたくさんの繭を出荷してもらいたい。海外も視野に絹製品のブランド化を進めたい」
たかぎ・まさる 1943年、高崎市生まれ。東京大法学部卒。農林水産省で蚕糸課長、農産園芸局長を歴任。元食糧庁長官。千葉県松戸市。
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「絹製品の開発を含めた総合的な絹産業として発展させたい」と語る高木社長