養蚕ビジネス広がる 4年で6社参入 富岡製糸場で注目
更新日時:2017年10月27日(金) AM 06:00
世界文化遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の誕生で絹文化への注目が高まる中、群馬県内で養蚕ビジネスに参入する企業が相次いでいる。世界遺産に登録された2014年以降に養蚕を始めたのは6社を数える。養蚕の生産性向上や付加価値の高い商品の開発、販路開拓が進めば、繭増産や雇用創出につながる可能性がある。
◎自社製品の原料確保が狙い
人材サービスのパーソルサンクス(東京)は6月、富岡市にとみおか繭工房を開設し、障害者雇用を目的に養蚕業に参入した。スタッフのほとんどが初心者で、繭生産は
春蚕が目標100キロに対して70キロ、晩秋蚕は200キロに対して140キロにとどまった。
スキルを身に付けるのに時間がかかるため、高品質な繭を売って稼ぐ本来の養蚕ビジネスはすぐにはできない。そのため同社は、障害者が世界遺産のある富岡で生産するというストーリーをPRしている。
「富岡シルクのブランド力にビジネスチャンスがある」と中村淳社長。繭や紡ぎ糸で作ったグッズ、桑の木を素材にした和紙を作るなど、付加価値を付けて利益を出す方針だ。
養蚕を手掛ける企業の多くは自社製品の原料を確保するのが狙いだ。化粧品製造販売の絹工房(同市)は企業養蚕の先駆けで、シルク成分配合化粧品に繭を使っている。15年は240キロ、16年には430キロの繭を生産した。今年はあえて量を220キロに減らし、人工飼料を使った飼育法の研究に乗り出した。
養蚕事業部マネジャーの金子聡さんは「人工飼料で年間通じて生産できるシステムが整えば、雇用や増産など事業計画も立てやすくなる」と説明。社員の誰もが作業に従事できるよう、効率化やマニュアル化にも取り組んでいる。
16年度の県内の繭生産量は45.8トンで、本年度も同程度と見込まれる。企業の生産量は全体の1割以下で、関係者はのびしろがあるとみている。県蚕糸園芸課絹主監の岡野俊彦さんは「技術が習熟してくれば生産規模が拡大し、新規就農者の雇用の受け皿にもなる」と話している。
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晩秋蚕に桑を与える職員=9月下旬、富岡市のとみおか繭工房