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活発な意見が交わされたパネルディスカッション=県公社総合ビル
富岡製糸場高く評価 世界遺産国際シンポ 遺産群との関連強化を 本登録へ専門家助言
掲載日2010/11/29
海外の専門家を招き、本県の世界遺産候補の価値について議論する「富岡製糸場と絹産業遺産群国際シンポジウム」(県、文化庁主催)が28日、前橋市の県公社総合ビルで開かれた。専門家は旧官営富岡製糸場の歴史的、建築的な価値を高く評価する一方で、製糸場と遺産群との関連付けの強化や、重要な要素に絞った明確な提案など本登録に向けた具体的なアドバイスを行った。
国際シンポジウムは今年2月に続いての開催。今回は本登録の可否を審査する国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)の関係者を中心に招いた。
始めにイコモス・カナダ会長で元国際イコモス事務局長のディヌ・ブンバルさんが「世界遺産―地域と世界をつなぐ」と題して基調講演。各国の遺産が地域とのかかわりの中で保存・活用されてきた経緯やイコモスの役割について紹介。世界遺産がすでに911カ所に上り、さらに暫定リストに1375カ所が記載されている状況を挙げ、「多くは新しいテーマを模索し、単独ではなく『複数資産』なのが特徴。問題は、どれだけ明確な推薦書を作り、世界遺産条約に貢献できるかだ」と提言した。
パネルディスカッションではブンバルさんら4人が登壇。同製糸場については「すでに本登録されている欧州の産業建築物と同レベル」「日本の伝統も加味していて素晴らしい」との意見で一致した。
イコモス・ハンガリー事務局長のタマシュ・フェジャルディさんは本登録の基本条件となる顕著で普遍的な価値の証明に触れ、「ただ価値があると言うだけでは駄目。説得力のある本質的な表現、いわば“ユネスコ語”で書かなければ理解されない」と指摘した。
国際産業遺産保存委員会理事のマッシモ・プレイテさんは「産業遺産の本登録は非常に厳しい道。構成資産をもっと広い文脈で考え、全体をつなげて一つのシステムであることを示せば困難もチャンスに変えることができる」と話した。清華大歴史研究所助教授の毛傳慧(マオチュアンフイ)さんは「富岡製糸場は素晴らしい建築物なのだからもっと説明や工夫を凝らしてはどうか。技術革新がどのように起こりどう展開したかをより良く示せばいいと思う」と助言した。
また、県世界遺産学術委員会委員長の岡田保良さんは26、27日に開かれた国際専門家会議の概要を報告。同遺産群の価値について、(1)蚕糸業技術の開発、移転で人類の価値観を双方向で表している(2)伝統的な生糸生産と製糸工場の融合が独特(3)生糸生産の増大が日本近代化の原動力となったのは特筆すべき現象―の3点を確認したと述べた。
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