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観光面で期待される産業遺産=2007年1月、旧官営富岡製糸場
22、23日富岡で「全国産業観光フォーラム」 製糸場と絹産業遺産群 「体験型」推進で強み
掲載日 2009/10/12
「全国産業観光フォーラムin上州とみおか09」(全国産業観光推進協議会など主催)が22、23の両日、富岡市で開かれる。近年注目されている「産業観光」を生かした地域の活性化、世界遺産登録運動に絡む本県の産業遺産群の活用・連携などが討議される。
産業観光は世界各地で取り組みが始まっている。先進地のヨーロッパでは産業革命の発祥地として名高い世界遺産・アイアンブリッジ峡谷(英国)、日本では自動車産業が盛んな愛知県のトヨタ博物館などが有名だ。
県世界遺産推進課長の松浦利隆さんは昨年から今年にかけて、ヨーロッパの産業遺産を視察した。英国のニュー・ラナークとソルテアはいずれも世界遺産で、紡績工場を核とした産業集落。現在はホテルやショッピングセンターといった大規模な商業施設に活用されているという。
一方、ドイツのフライベルグ鉱山博物館は観光客が作業着姿で地下250メートルの坑道を歩き、銀の採掘を追体験するスタイル。松浦さんは「個人的にはドイツの方が感動した。本物を見て体験できると、訪れた人の心に残るのではないか」と振り返る。
本県には世界遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」をはじめ養蚕、製糸、織物、流通関連の資産が数多く残っている。特に、現役の養蚕農家や製糸・織物工場があることは体験型の観光を推進する上で大きな強みだ。
観光資本は有名な文化財だけに限らない。世界遺産候補で国重要文化財の冨沢家住宅(中之条町)の付近には、「赤城型」や「近代」といった本県の典型的な養蚕家屋が建ち、時代の変遷が見て取れる。手入れされた桑畑とともに素晴らしい景観が広がる。
アクセス手段が車に限られる所が多く、誘客のためには今後、駐車場など周辺整備がより重要になってくる。松浦さんは「目的地に着くまでの道のりに歴史を踏まえたストーリーを作るなど、楽しく歩ける工夫が一番いいのではないか」と話している。(江原昌子)
【産業観光】
産業に関する施設や技術などの資源を使い、ものづくりの歴史や仕組みを学びながら楽しむ観光。日本では2003年に当時の小泉純一郎首相が観光立国を宣言、中部地方を中心に産業観光が活発化してきた。大規模な会合は全国産業観光サミット(01年、名古屋市)に始まり、02年からは全国産業観光フォーラムとしてこれまで鹿児島、札幌、富山など各市で開かれている。
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