上毛新聞社「21世紀のシルクカントリー群馬」キャンペーン
上州商人の功績が語られたシンポジウム
貿易を支えて 日本繁栄の礎 横浜で活躍した上州の生糸商 シルクカントリー双書の発刊記念し前橋でシンポ 地元発展にも貢献
掲載日・2009/07/20
シルクカントリー双書発刊記念イベント「横浜開港と上州・絹の先人たち」(上毛新聞社主催)が19日、前橋市大手町の臨江閣で開かれた。開港150周年を迎えた横浜と、本県の発展に深くかかわる生糸商がテーマ。講演とシンポジウムで、生糸貿易が日本繁栄の礎を築いた功績を再認識した。
始めに横浜開港資料館主任調査研究員の西川武臣さんが「横浜で活躍した上州の生糸商」と題して基調講演。嬬恋村出身の中居屋重兵衛、みどり市出身の吉田幸兵衛ら上州の商人が横浜で活躍した背景を解説した。
西川さんは、上州人が最大規模の生糸輸出を担えた理由を「人脈のある藩や幕府の旗本たちと貿易システムをつくり、短期間で大量の生糸を集荷できた」と説明。「彼らが黎明(れいめい)期の生糸貿易と日本の近代化を支えたと言っても過言ではない」と語った。
続くシンポジウム「糸のまち前橋と横浜―絹の先人たちが残したもの」では、西川さん、共愛学園前橋国際大名誉教授の石原征明さん、県立歴史博物館主幹の手島仁さん、染色美術家の今井ひさ子さんが登壇した。
手島さんは前橋を代表する生糸商として初代前橋市長の下村善太郎を挙げ、「幕末、下村家には九つの蔵があったが、その財力をほとんど前橋のために使った。いくら褒めても褒めすぎではない」と評価。石原さんは「前橋の商人は生糸生産者の側面もあった。土地を離れず、横浜に生糸を送ることで利益を得ていた」と特徴を指摘した。
先人の遺産を後世にどう伝えるかという話題では、今井さんが「前橋は利根川に架かる橋が九つあるが、川をじっくり眺められる場所がほとんどないのは残念。糸のまちを印象づける工夫をしてみたらどうか」と提案した。
会場には県民ら120人が訪れた。休憩時間には、上州座繰り体験や萩原朔太郎作曲「機織る乙女」のマンドリン演奏などが行われ、来場者があらためて絹文化に親しんだ。
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