上毛新聞社「21世紀のシルクカントリー群馬」キャンペーン
真剣な表情でパネリストの話を聞く来場者
《シルクカントリーin桐生》 重伝建選定へシンポ 地域の貴重な財産
掲載日・2009/02/23
篠原 辰夫さん
しのはら・たつお 1940年、六合村生まれ。2006年に重伝建に選定された同村赤岩地区の保存や活性化に向けた活動を行う。
森 寿作さん
もり・じゅさく 1940年、桐生市生まれ。同市本町一丁目町会長を務めた。買場紗綾市(かいばさやいち)実行委員長。
亀山 豊文さん
かめやま・とよふみ 1950年生まれ。県議3期を経て2007年から桐生市長。08年、市に伝建群推進室を設置。
赤岩との連携期待 篠原さん
活動通し産業刺激 森さん
織物の町アピール 亀山さん
―「シルクカントリー群馬」の中で、桐生が果たす役割や期待、可能性について話を進めたい。
清水 日本の絹産業は、養蚕、製糸、織物という一連のサイクルを千年以上も続け、文化をはぐくんできた。世界遺産登録推進運動は、この千年におよぶ絹文化を断ち切らず、後世に伝えていくことがバックグラウンド。桐生には深みのある日本の絹織物を作り上げる技術と文化が蓄積されており、それを世界に発信する場。世界遺産は、桐生がどんな力を持っているのかを、世界に訴える場ととらえるべきではないか。
篠原 赤岩地区は世界遺産暫定リストに登録されたことで、地区住民が自信を持ち、地区を守ろうという意識を持ち始めた。そんな中、たとえば赤岩で育てた蚕からとれた繭を桐生で最終製品にしてもらえるようなルートができればありがたい。観光面でも連携したい。
森 桐生の魅力はものづくりであって、外から来る人も織物に期待して来る。だから桐生で作ったものを、ここで買っていただいたり、見ていただくことができないか。それが桐生の産業の支えになればいい。それをシルクカントリー群馬という大きな仕掛けの中でしたい。重伝建や世界遺産の先にもっと大事なものがあるということを肝に銘じて、実現させたい。
―こうした意見に対して、市長はどう思うか。
亀山 桐生に残る古い建物を生かしたまちづくりは、県が目指す世界遺産の運動に連動する。この地域の蔵や住居、のこぎり屋根の工場や商家は、織物で栄えてきた町だということをアピールしたい。着物を着たり、機織りや染色を、気軽に体験できる形の観光も必要だろう。こういうことを通して、織物で栄えてきたことを再認識してほしい。
―重伝建や世界遺産登録に向けて助言を。
松場 世界遺産に登録されることが目的ではなく、その先に豊かな地域の暮らしがあったり、次世代に引き継いでいく財産を守っていく。そういう意識がないと方向を間違うのではないか。さらに異業種の部分と連携して、新しいことを生み出していく工夫も大切だ。自分のことは見えにくいものだが、自分を信じて、強い気持ちで臨むことで何か見えてくる。
清水 本町一、二丁目は「絹文化を持つ桐生」というイメージを伝えるのには分かりやすいところ。住民の力で重伝建を形にしてほしい。世界遺産に登録された時、地域から世界に発信するのであれば、どんな方法で行うのかを考えておくべきだろう。
◎世界遺産登録運動
本県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産暫定リストに記載されたのは2007年6月。明治政府が産業の近代化を目指して設立した富岡製糸場など、蚕糸業にまつわる8市町村10カ所で構成されている。
世界遺産登録に向けた取り組みは、県が03年に決めたプロジェクト開始を機に具体化。これを受けて各地で地域住民の意識が高まり、積極的な運動が暫定リスト入りを後押しした。
現在は、世界遺産委員会に提出する推薦書作成に向け、構成資産の枠組みの検討段階にある。同遺産群には含まれていない桐生市本町一、二丁目建造物群、境島村養蚕農家群(伊勢崎市)、新町紡績所(高崎市)について、県と関係市町村は昨夏から、構成資産としての取り込みも視野に話し合いを進めている。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------