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構成資産拡充へ協議 初の関係首長会議 “慎重”3市も参加 世界遺産登録運動
掲載日・2008/07/31
世界遺産暫定リスト入りしている「富岡製糸場と絹産業遺産群」の本登録に向けた関係市町村長会議が三十日、前橋市内で初めて開かれた。県と同遺産群を構成する八市町村のほか、地元資産の遺産群への推薦を見合わせている高崎、桐生、伊勢崎三市を加えた十一市町村の首長ら代表が出席。今後、構成資産の拡充を視野に、県と十一市町村が事務方の協議を進めていくことで合意した。
会議の冒頭、大沢正明知事は六月にパリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部を訪問した成果を「世界遺産登録が価値ある大切な事業であり、審査が年々厳しくなっていると再認識した」と報告。「原点に戻り、連携して運動を進めていかなければいけない」と強調した。
さらに富岡市の岩井賢太郎市長が「(高崎の)紡績所や(桐生の)織物の遺産などは絶対に入れるべき。話し合いを持ってもらいたい」と、三市を含めた連携に向けた努力を県に要請。県が十一市町村による事務方の協議を提案したところ、「大至急必要」「遅すぎるくらい」と早急な開催を求める声が相次ぎ、協議開始が決まった。
のこぎり屋根の織物工場が残る「本町一、二丁目建造物群」が新たな遺産群候補となっている桐生市の亀山豊文市長は、遺産群への加入を明言しなかったものの、「養蚕、製糸、織物という流れの中で責任は感じている。本町一、二丁目だけで織物資産の価値は十分なのかという心配もある。じっくりと協議していきたい」と発言。新町屑(くず)糸紡績所が候補の高崎市の座間愛知副市長は「まだ住民の合意が一致していない。全体の遺産のビジョンを示した上で、やはり新町が重要という話になれば理解が得られるのではないか」と話した。
続く講演でも、国立科学博物館参事の清水慶一氏が高崎、桐生、伊勢崎の三カ所を含めた構成資産の拡充が望ましいとし、「遺産をつなぎ合わせる発想は西欧人にも受け入れられやすい。(遺産群を)東の方にもぜひ広げたい」と語った。
県が「連携」を掲げる背景には、本県の絹産業の流れを構成する上で欠かせない三市の遺産を取り込みたい思惑がある。遺産候補は屑糸紡績所、桐生の建造物群のほか伊勢崎市の境島村養蚕農家群。県は二〇〇六年十月、この三件を含む十三件を文化庁に提案する産業遺産群の候補地として関係市町村に提示したが、三市は予算調整や住民合意ができていないなどの理由から候補地として推薦することを見送った。
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