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改装中の金谷レース工業鋸屋根工場内に立つ武田社長
桐生の象徴「使って残す」
解体危機脱し飲食店で再生 築89年国登録有形文化財 金谷レース工業鋸屋根工場
掲載日・2008/03/27
桐生市の国登録有形文化財で、市内唯一のれんが造りののこぎり屋根工場「金谷レース工業鋸(のこぎり)屋根工場」=同市東久方町=が解体の危機を乗り越え、市民の手で保存されることが26日までに分かった。国の重要文化財、桐生明治館で、「文化財を使いながら残す」手法に先鞭(せんべん)をつけた同市ならではの知恵が生かされた格好。工場は国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)選定を目指す同市本町一、二丁目の隣接区域にあり、今後のまちづくりの観点からも保存が望まれていた。
地元パン店が取得
同工場の保存に乗り出したのは、市内のパン店「ルパン」=同市西久方町、武田敏央社長(63)。担保物権として競売の危機にあった同工場を昨夏買い受け、改装を経て四月中旬にもベーカリーレストランとして生まれ変わらせる。
同工場は「イギリス積み」と呼ばれるれんが工法が使われ、一九一九(大正八)年に完成。建築面積は約三百平方メートルで、四連ののこぎり屋根が残る。市内に二百棟余りあるのこぎり屋根工場の中でもシンボル的な存在。九八年に国の有形文化財に登録された。
金融機関の元職員、清水宏康さんらが買い手を探したところ、武田社長が「子供のころから近くで遊んでいた伝統の建物を残し、桐生のために生かしたい」と名乗りを上げた。
現在、工場の改修工事を進めている。「れんが壁の原形をなるべく残したい」と、しっくいやベニヤ板の内壁を取り除き、損傷した部分は新しいれんがで補修した。鉄骨の支柱を使い、耐震性を向上。店舗に隣接する事務所跡も、同工場の歴史を伝える資料展示施設にする。
仲介した清水さんは五月にも、理事長としてNPO法人「桐生再生」を設立、市内の近代化遺産を活用した観光案内のシステムづくりなどを目指す。同法人の理事の一人は「工場が解体されると、重伝建を目指す区域の価値が下がる恐れもあった。のこぎり屋根工場活用の先例として注目したい」と話している。
解体危機脱し飲食店で再生 築89年国登録有形文化財 金谷レース工業鋸屋根工場
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