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世界遺産候補として提案された足尾銅山=栃木県日光市
“負の歴史”も後世に 足尾銅山を提案 わたらせ渓谷鉄道通洞駅など対象に
世界遺産候補で栃木県j
掲載日・2007/09/27
文化庁の世界遺産候補地公募に対して、栃木県が二十六日提案した日光市の「足尾銅山」は、近代鉱工業を発展させた輝かしい歴史だけでなく、鉱毒被害を引き起こした“負の遺産”としての存在意義がアピールされている。公害は本県東毛地区にも及んだほか、構成遺産にわたらせ渓谷鉄道(旧足尾鉄道)の駅舎が含まれるなど本県とも切り離せない関係があり、今後の動向が注目されている。
提案の名称は「足尾銅山―日本の近代化・産業化と公害対策の起点―」。
徳川幕府の御用銅山だった足尾銅山は、一八七七(明治十)年に民営となり東洋一の生産量を誇ったが、製錬で発生する亜硫酸ガスと廃水による環境破壊が明らかになり、田中正造が帝国議会で追及、社会問題になった。一九五六(昭和三十一)年に世界で初めて自溶製錬法という同ガス対策が導入され、世界に普及した。
構成遺産は坑道や火薬庫、水力発電所、橋、同鉄道の足尾駅、通洞駅など銅山跡地とその周囲にある建造物二十五件。
栃木県教委は「日本の急速な産業化の歴史の反映であると同時に、日本で初めて社会問題化した公害とその対策の歴史」と位置付けている。
文化庁は「公害を題材にした世界遺産は世界的に例がない」としている。
本県関係者行方に注目 鉱毒、煙害忘れず
栃木県が足尾銅山を世界遺産候補として提案したことを受けて、本県の関係者からは鉱毒被害を引き起こした“負の遺産”であることを、今後もしっかりと示すよう求める声が上がっている。
館林市のNPO法人足尾鉱毒事件田中正造記念館の広瀬武理事長は「煙害と鉱毒被害で二つの村がなくなった事実は忘れてはならない」と強調した上で、「負の遺産とする方向性は良い」と語る。
アマチュア写真家として銅山の写真を撮り続けている太田市の武井正夫さんは「公害のはげ山に、緑が増えた足尾を遺産として残すことは、環境問題を考える良い機会になる」と評価する。
一方、鉱毒の被害者らでつくる渡良瀬川鉱毒根絶太田期成同盟会の板橋明治会長は「鉱毒によって生活も人生も一変してしまった。世界遺産にするのであれば、まず山を元に戻し、水をきれいにしてほしい」と訴える。
わたらせ渓谷鉄道の乗客増や地元の活性化を期待する声もある。同鉄道の松島茂社長は「富岡と桐生が絹で、桐生と足尾が銅で世界遺産になれば、わ鉄に乗って世界遺産巡りができる。大変な観光資源になる」と期待を寄せる。
わたらせ渓谷鉄道市民協議会長を務める桐生市の佐羽宏之さんは「鉱山に埋もれた当時の日本の技術を保存するチャンス。わ鉄も銅山が原点であり、世界に注目される存在になる」と語る。
世界遺産候補で栃木県j
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