上毛新聞社「21世紀のシルクカントリー群馬」キャンペーン
7種類目の群馬オリジナル蚕品種となった上州絹星
絹復興に新蚕品種 県が開発 「上州絹星」デビュー 農家で本格飼育へ
掲載日・2007/03/19
県は4年がかりで研究していた新しい群馬オリジナル蚕品種の開発に成功、「上州絹星(けんぼし)」と名付けて、今年から本格的に県内養蚕農家で飼育を始める。新品種は4年ぶり7種目。優れた伸縮性と強度、染色性など「品質の良さ」と、絹の国群馬の「ブランド力」を前面に出し、格安の輸入生糸に対抗する。世界遺産登録を目指す旧官営富岡製糸場など絹産業遺産群が注目される中、現役の絹産業を復興することも本県の課題となっており、新品種に期待が集まっている。
上州絹星は、在来種「又昔」と中国種「二」を交配した。又昔は江戸時代以前から飼育されてきた日本古来の品種。光沢が優れているものの、収繭量は一般品種の半分以下と少ない上に飼育が難しく、一九三〇年代以降はほとんど飼育されていなかった。
県蚕業試験場は又昔の光沢と希少性に着目。四年間にわたり場内や県内の養蚕農家でさまざまな交配を繰り返したところ、「二」と交配した蚕は病気に強く、繭のほぐれ易さや糸の伸縮、色づきも良好で、収繭量が少ない欠点にも改善がみられた。昨年試験飼育した県内農家ではいずれも高品質の繭が取れ、今年は春はるご蚕と晩秋蚕でそれぞれ二十―三十戸が本格的に飼育を始める。
名称は県や同試験場、民間が十五種類の候補名を挙げた中から、絹産業の県内有識者で作る「ぐんまのシルク」認定委員会が選んだ。糸の輝きそのものと、蚕糸振興の星となることの願いが込められている。
幕末から昭和にかけての本県絹産業は日本の近代化に大きく貢献し、関連する建物は「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界遺産暫定リストに記載されることが今年一月に決まった。これに合わせて、衰退の危機にある現役の絹産業も復興するのが関係者の悲願で、新品種は“切り札”の一つとされている。
この新品種に関しては昨年、品種開発の段階で連絡を取り合っていた京都市内の織物業者が県側に事前連絡なく「又昔」を商標登録し、着物や反物、衣服の分野で「又昔」の名称を独占使用する権利を得たため、蚕品種の名称として「又昔」の使用が難しくなっていた。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------