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薄絹を挟んだ型板を枠にはめて締める作業 紅板締めの試作品を並べ、技法を検証する「たかさき紅の会」のメンバー
幻の染め−紅板締め−を復元 たかさき紅の会 県繊工試で23日実演
掲載日・2007/03/14
江戸から昭和初期にかけて行われた染色技法「紅板締(べにいたじ)め」の復元に、かつての染め織物の産地、高崎市を拠点に活動している「たかさき紅の会」が成功した。同市内で昭和初期まで操業した吉村染工場=豆字典=の資料を基に研究を重ね、三年掛かりで「幻の技法」を確立した。同会は今後、技法を体験できる場を設けたり、紅板締めによる着物を作るなどして、途絶えていた伝統の染めの復活を目指す。二十三日には県繊維工業試験場(桐生)で染色の実演を行い、技法を披露する。
紅板締めは、模様を彫った型板に薄絹を挟んで染料液をかけ、緋色(ひいろ)地に白い模様を染め抜く技法。礼装用着物の合着などに使われ、女性たちが隠れたおしゃれとしてまとった。
同試験場によると、需要の落ち込みや多色技術の普及によって生産が途絶え、全国的にも紅板締めのできる職人はいないという。
吉村染工場創業者の子孫で、染色作家の吉村晴子さん(72)=高崎市相生町=が代表を務める同会は二年前、県の「文化の芽」支援事業として復元に着手。同試験場や高崎経済大名誉教授の高階勇輔さん、前県立館林美術館長の黒田亮子さんも加わり、繊維、美術史、染色など各分野合同のプロジェクトとなった。
復元に先立ち、紅板締めが盛んだった京都の文献などに当たり、高崎の絹や染工場に関する調査を実施。吉村家に残っていた彫りかけの型板を参考にして型板を復元し、板締めに使う枠も製作した。
昨年十月、染色作業に入り、十二回にわたって試作を繰り返した。資料に工程は書かれていても、具体的な記述や図はなく、生地の畳み方から型板を締める強さ、染料液の濃度とかけ方を検証した。
三月四日の作業で従来より薄い絹地を使ったところ、かつての紅板締めの姿にたどり着いたという。同十一日に再度、染色作業を行い、技法の復元を確認した。
吉村さんは「文化の復活を目指し、試行錯誤の連続だった。紅板締めを通じ、多くの人に絹を知り、白を知り、赤を知ってもらえれば」と話している。
同試験場での実演は二十三日午後一時半から。見学の申し込みは、同試験場(電話0277・52・9950)へ。
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