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島村教会 催青所
「重伝建」視野に調査 伊勢崎市教委が催青所と島村教会の詳細な平面図作製
掲載日・2006/12/30
伊勢崎市教委は五日までに、大型養蚕農家が数多く残る伊勢崎市境島村で、温度や湿度、光線などを調節して蚕種(蚕の卵)をふ化させる催青所(さいせいじょ)と島村教会の調査に乗りだした。島村地区に現存する催青所は調査個所だけという。島村教会は初期のトラス小屋組み構造を持つ貴重な建築。市教委は本県の世界遺産登録構想に養蚕農家群の推薦を見合わせたが、同地区の重要性を認識。国の重要伝統的建造物群保存地区=豆字典=の選定も視野に入れて調査を進めている。
調査する催青所は、島村の新野新田地区の蚕種業者六軒が組合をつくって設置。建築年代や操業期間ははっきり分からないという。改修して現在は境島村簡易郵便局として使われている。郵便局の事務所の下に半地下室となっている縦五・四メートル、横四・六メートル、高さ二・五メートルの催青所がある。隣接して蚕種を産み付けた種紙を冷蔵貯蔵していた「冷蔵庫」が地下にある木造の建物がある。
島村教会は一八九七(明治三十)年完成で、当初の礼拝堂は木造平屋建て。トラス小屋組み構造だが強度を補強するため、直径一三ミリの鉄筋を使用している。このため、洋風建築導入期の構造を伝える貴重な建造物といわれている。
調査によって二カ所とも詳細な平面図や立面図、断面図、構造図、配置図を作る。
同地区はかつて日本三大蚕種産地の一つとして栄え、田島弥平が「養蚕新論」を著した地。同書の指導に基づく越屋根付きの大型養蚕農家が数多く残る。地元有志らがぐんま島村蚕種の会を結成し、歴史講座を開催したり建造物調査を行っている。
世界遺産登録運動の効果で、見学者が増加していることから、案内コースの設定や解説用文章を作成。早ければ二月にガイド養成講座を開く。
市教委は「県の世界遺産登録構想に島村地区の養蚕農家群の推薦を見送ったが、島村が本県の絹産業に果たしてきた役割は十分認識している。これからも島村に残る貴重な歴史遺産の調査を続けていきたい」と説明している。
◎豆字典
重要伝統的建造物群保存地区 歴史ある建物と町並みについて、国が実際の生活の舞台のまま保存する取り組みを進める地区として選定する。1976年、京都市産寧坂地区など7件が初めて選ばれた。本県では昨年7月、養蚕で栄えた農村風景が残る六合村赤岩地区が選定されている。
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