葬儀の前後にはやらなければならない手続きがたくさんあります。できるだけ効率的に対処するために、手続きの方法や、届出先、期限、必要な書類などをあらかじめ知っておく必要があります。ここでは、銀行預金や生命保険、不動産、株式、社会保険や公的年金など金銭に関わる手続きについて説明します。
◎ 銀行預金/郵便貯金の解約と相続
 死亡者名義の銀行預金については、相続預金払戻依頼書に記入して手続きを行います。その時に戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、相続の証明書類、通帳、相続人代表者の実印などが必要になります。 郵便預金・保険の解約の時は、相続人であることを証明する書類、また、相続人全員が代表者に委任する委任状、代表者の証明書(運転免許証、健康保険証など)が必要です。
◎ 死亡保険金の手続きと相続
 生命保険の被保険者が亡くなると、保険金受取人に死亡保険金が支払われます。故人が契約していた保険をよく調べることも大切です。受け取りの手続きは、契約している保険会社へ連絡すると、必要書類の案内が届くので、それにしたがって手続きをします。必要な書類は、保険金請求書、保険証券、最終支払分の保険料領収書、死亡診断書(または死体検案書)、被保険者の住民票、保険金受取人の戸籍抄本、保険金受取人の印鑑証明などです。保険受取人が複数の場合は、全員の戸籍抄本と印鑑証明が必要です。また、手続きできる期限は3年です。
◎ 不動産の相続
 不動産(宅地・家屋など)の相続では、相続財産の名義書換えが必要となります。手続きは、相続により所有権移転(保存)登記で、手続き先は法務局(本支局、出張所)です。必要な書類は、所有権移転登記申請書、戸籍謄本(相続人)、除籍謄本(被相続人)、住民票、抄本(相続人)、固定資産評価証明書です。
◎ 株券の相続
 株券の相続については、株式の会社や証券会社で、株主名義変更という手続きを行います。必要な書類は、株主名義変更申請書、株券、共同相続人の同意書(印鑑証明書付)などです。
◎ 社会保険の手続き/遺族年金などの支給条件
 現在、20歳以上のすべての国民は国民年金、サラリーマンなどは厚生年金、公務員は共済年金に加入しています。

● 国民年金について
 国民年金の第1号被保険者(自営業者や農林水産事業者とその妻、学生)が死亡した場合には、手続きは市区役所・町村役場の窓口または社会保険事務所で行います。条件により遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金のいずれかが申請により支給されます。
 遺族基礎年金は、故人によって生計を維持していた子ある妻、あるいは子に支給されます。子の条件は、満18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない、または1級もしくは2級の障害のある20歳未満の子とされています。必要な条件は、故人が国民年金の保険料を納付しなければならない期間の3分の2以上、保険料を支払っていること。特例として、死亡日が平成18年4月1日前の場合、死亡日前1年間の全期間保険料の滞納がない場合でもよいとされています。
 寡婦年金は、老齢基礎年金の資格期間を満たした夫が死亡した時、10年以上結婚していた妻に、60歳から65歳になるまでの5年間に限り、夫の年金の4分の3に相当する額が支給されるもの。
 死亡一時金は、保険料を3年以上納めた人が、老齢基礎年金も障害基礎年金も受けないで死亡し、その遺族が遺族基礎年金を受けられない場合に、死亡した人の保険料を納めた期間に応じて、一時金として支給されるものです。

※第2号被保険者(サラリーマン、OL、公務員など厚生年金や共済年金の加入者)や第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている妻)は、勤務先を通じて社会保険事務所に手続きをしてください。
 第2号被保険者が亡くなった場合(または被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡した場合)は、条件により遺族厚生年金が申請により支給されます。支給されるのは、・遺族基礎年金の対象と同じ条件の妻と子・子のいない妻・55歳以上の夫、父母、祖父母(60歳から支給)・孫(満18歳到達年度の末日を経過していない者、または20歳未満で1・2級の障害者)、となります。支給条件は、国民年金と同じく保険料を納付しなければならない期間の3分の2以上厚生年金を納付していることです。
 年金を受けている人が死亡した場合は年金受給権者死亡届を提出してください。提出期限は14日以内です。死亡した人が未受給の年金がある場合は、未受給年金・保険給付請求書を提出します。
 また、年金を受けていた人によって生計を維持していた遺族がいる場合も、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)が支給されます。