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5 「繭かき」農家に至福の時
蔟から繭を取り出す「繭かき」作業。「機械化が進み、随分楽になった」と語る石上光次さん(左)は、機械に次々と蔟を入れた
蔟から繭を取り出す「繭かき」作業。「機械化が進み、随分楽になった」と語る石上光次さん(左)は、機械に次々と蔟を入れた

 養蚕農家に至福の時が訪れた。上蔟(じょうぞく)から九日目。上州絹星の蚕は皆、真っ白い繭へ姿を変えた。高崎市金古町の石上光次さん(72)宅も豊作。回転蔟(まぶし)に繭がぎっしりと詰まっていた。石上さんは「初めての品種だけどしっかりした繭ができた。これなら良い糸を作ってもらえそうだ」と、うれしそうに胸を張った。

 まぶしを一枚ずつ機械に入れると、毛羽の取れた繭が下からコロコロと落ちてきて、段ボール箱に入る。以前は親せきや近所の人に手伝ってもらって三日がかりの作業だったが、機械化が進み、飼育量を減らした今年は半日で終わった。

 妻のミヨさん(71)の心も弾む。新品種で神経を使った分だけ、収穫の喜びも大きい。「緑の桑ばかり食べて、こんなに白い繭になるなんて不思議だね」。床一面に広げた繭を見て目を細めた。

文・斉藤洋一
写真・梅沢守

(2007/6/14掲載)(次回は七月初旬に掲載します)

上州絹星
日本古来の品種「又昔」を交配し、県蚕糸技術センターが開発した新しい群馬オリジナル蚕品種。 今年から本格飼育が始まり、現在は前橋、高崎の養蚕農家14軒が飼育中。 今後は県内の製糸場、機屋、作家らの手で製品化される予定。