繭の海。出荷前に広げて乾かし、最後に選別し残した悪い繭を拾う。養蚕農家では蚕を「お蚕様(こさま)」と呼んであがめた |
上州座繰(ざぐ)り。そう呼ばれる大小の歯車を組み合わせた木製の道具に夢が詰まっていた。繭を煮て、糸をすくい、巻き取る。根気のいる仕事が、家を支え、国を富ませた。日本の近代化、戦争、敗戦、復興…。世紀を超えて糸車は回り続ける。そして、母から娘へと、代々受け継がれてきた糸引きの風景は、蚕業の衰退とともに故郷の農村から消えようとしている。どこに置き忘れてきたのだろうか。かすかに残る繭の記憶。心の糸をつむぎ、二十一世紀に伝えるメッセージをたぐり寄せてみたい。
(2000年11月28日掲載)
※ 全文は刊行中の「繭の記憶」をご覧ください。
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