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《守る生かす 尾瀬国立公園10年(3)》環境 マナー向上呼び掛け
2017/08/28掲載
最近、一緒に活動する仲間が増えた志斎さんは、出勤前の時間を利用して尾瀬ケ原を進み、ごみを拾っている。ハイカーが山の木をつえ代わりに使った揚げ句、木道脇に捨てていくケースも目立つという。 尾瀬は国立公園協会のモデル事業として全国に先駆け、ごみ持ち帰り運動がスタートした自然保護の原点と呼ばれる場所。「今後、東京五輪に向けて外国人観光客が増えると思う。日本人には見本になる行動をしてほしい」。志斎さんは活動を通じて、入山者にマナー向上を呼び掛けるつもりだ。 一方、東京都内で水道関連の仕事に携わり、40年前から年に5、6回は尾瀬を訪れる渡辺和則さん(61)は「昔に比べれば、ごみは格段に減った」と受け止めながらも、尾瀬のトイレ管理を心配している。 尾瀬ケ原を中心に広がる高層湿原は、貴重な植物の宝庫。現在の環境を維持するには、トイレの汚物を適切に処理する必要がある。環境に変化をもたらす汚水の流出を防ぐため、トイレには特別な浄化装置が設置されている。処理後は固形物となり、ヘリコプターで搬出される。 公園内で2カ所のトイレを管理する県によると、年間の維持費は1200万円に上る。環境保全に関する予算が限られる中で管理を続けていくため、利用者に100円程度の負担を求める「チップ制」が1996年に導入された。だが、トイレを使っても払わない人は少なくない。 チップを払わない利用者がいることに関し、渡辺さんは「人は人、私は私。それぞれの意識に差があるので何も言えないが、トイレの管理が大変なのは分かる。これからも協力していきたい」と話した。 ◎あの日の紙面 尾瀬の環境保全への意識を高めてもらおうと、県は片品村戸倉の鳩待峠と大清水登山口で「ごみ持ち帰り運動」を実施した。ハイカーに、ごみ袋やたばこの吸い殻入れを配布するなどして運動の徹底を図った。 「ごみ持ち帰り運動」は、財団法人国立公園協会のモデル事業として、1972年に尾瀬でスタートした。 (2007年6月3日付上毛新聞) |