無限の表情 尽きせぬ魅力 尾瀬国立公園
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 《守る生かす 尾瀬国立公園10年(2)》被害 シカ排除へ策巡らす
2017/08/26掲載
シカ捕獲用わなを確認する北沢さん
シカ捕獲用わなを確認する北沢さん
 まだ尾瀬に春が訪れていない4月にニホンジカを捕獲するわなが片品村の山中に設置される。今年も地元猟友会のメンバーが雪山をかき分け、日光から尾瀬に向かうシカの獣道に100個のわなを仕掛けた。尾瀬への侵入を水際で防ごうと懸命な活動が続けられている。
 尾瀬国立公園内の高層湿原は、およそ千年前に現在の景観になったと考えられている。モウセンゴケやオゼミズギクが分布する世界的に貴重な湿原植生地は、国立公園特別保護地区や特別天然記念物に指定され、厳正に保護されてきた。
 しかし、1990年代半ばにニホンジカの生息が確認されて以来、湿原を中心に食害や踏み荒らしによる植生のかく乱が顕在化した。特に深刻なのはニッコウキスゲの食害。花芽を食べてしまうため種子ができず、ニッコウキスゲは姿を消す。そして別の植物に置き換わってしまう。
 シカの影響を受けずにきた尾瀬の生態系に、回復できないような影響が与えられることが危惧されている。国や関係自治体でつくる尾瀬国立公園シカ対策協議会は2009年3月、「尾瀬からのシカの排除」を目標に掲げる「尾瀬国立公園シカ管理方針」を策定した。
 協議会は毎年3月に会合を開き、シカの移動経路や防護柵などの対策の実施状況について情報交換している。協議会によると、影響が深刻な大江湿原は10年8月に20頭目撃されたが、防護柵により16年8月には2頭に減少するなど、一定の成果が出ているという。
 利根沼田猟友会片品支部は4年前から、シカを駆除するため、環境省の調査で判明した移動ルートにわなを仕掛けている。今年はゴールデンウイーク前までの約1カ月で102頭捕獲した。
 尾瀬認定ガイドでもある北沢吉日古支部長(68)は「初めて大江湿原のニッコウキスゲを見た感動を今も覚えている。辺り一面が真っ黄色に染まる見事な風景の復活に協力したい」と話している。

◎あの日の紙面
 尾瀬保護財団の評議員会と理事会が東京で開かれ、環境省は尾瀬でのニホンジカによるミズバショウやミツガシワの食害対策として本年度、移動経路上での捕獲を検討していることを明らかにした。シカの効果的な個体調整を探るのが狙い。同省は昨年度までシカの越冬地調査を進め、移動経路の割り出しに力を注いできた。
(2007年6月30日付上毛新聞)