尾瀬関連記事
尾瀬 65年ぶり基礎研究 4次総合学術調査 ドローンで植生把握 来年度から保護財団
2016/8/30掲載
尾瀬保護財団(理事長・大沢正明知事)は2017年度から、群馬、福島、栃木、新潟の4県にまたがる尾瀬国立公園で、65年ぶりとなる基礎研究を含む第4次尾瀬総合学術調査に着手する。3カ年計画で、ニホンジカの増加や気候変動などの外圧が与える影響を探る。ドローンを活用し、植生分布を上空からも把握。調査後は、動画や画像に解説を付けた「バーチャルミュージアム」をインターネット上で公開する予定で、情報発信にも力を入れる。
総合学術調査は、尾瀬の自然と環境を将来にわたって良好な状態で保つことを目的にしている。初回調査は研究者による調査団が1950〜52年、旧文部省の助成を受けて実施した。地形に関することや、動植物をリストアップするなどの基礎研究は初回のみで、以後はテーマ別の研究が行われてきた。 総合学術調査としては、花粉や泥炭層などを調べた第3次調査(94〜96年)以来およそ20年ぶり。同財団が昨年から内部に設けた検討委員会で、実施内容を検討してきた。 同公園の広さは3万7200ヘクタール。基礎研究は、本州最大の高層湿原として知られる尾瀬ケ原や、周辺エリアの動植物、環境変化の実態を広域的に調べる。湿原内で池のように水のたまった「池塘(ちとう)」や、尾瀬沼における水草の分布状態も調査する。 県内で生息域の拡大と頭数増加が問題となっているシカに関しては、尾瀬でも近年、被害が深刻化。夏に見頃を迎えるニッコウキスゲの食害が目立つほか、長い年月をかけて形成された泥炭層が掘り返される被害が後を絶たないという。 一方、記録的な少雪で今春の尾瀬沼周辺は雪解けが異例の早さとなるなど、地球温暖化が懸念される状況だ。今回の調査は、気候変動が尾瀬の生態系に影響を与える全体像を把握する機会になるとして、同財団は「貴重な自然を守るために現状を把握し、今後の対策につなげたい」とする。 学術調査には湿原や動植物などに詳しい大学教授らが携わり、基礎研究とは別に、温暖化の影響や将来予測を検討する重点研究にも取り組む。同財団は全体のコーディネートを担い、基礎研究に関わる費用(約3千万円)の一部を負担する予定。来年4月の調査開始を目指している。 ネット上で公開予定のバーチャルミュージアムは、ドローンで撮影した画像や動画を盛り込みながら、尾瀬の豊かな自然や多様な生態系を実感できる内容を検討している。 |