無限の表情 尽きせぬ魅力 尾瀬国立公園
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 《焦点(focus)》尾瀬守り魅力伝える 保護財団 20周年 シカ対策、外国人誘客… 新たな役割
2015/12/07掲載
 尾瀬保護財団(理事長・大沢正明知事)が設立20周年を迎え、19日に東京都内で節目を祝う記念事業を開く。全国初となる県境を越えた環境保護財団として、入山者へのマナー啓発や湿原の植生回復などの事業を通じ、尾瀬の保全と適正利用の促進に重要な役割を果たしてきた。シカの食害対策や外国人旅行者の誘致など新たな課題に直面するなか、財団の役割は重要さを増している。

■単独国立公園に
 財団は1992年8月、尾瀬の一元管理を目的に、群馬、福島、新潟の3県知事が設立に合意し、95年8月に発足した。3県と片品村などの自治体、環境省、土地の一部を管理する東京電力などで構成する。
 木道や登山道の整備といったハード面は国や各県が担い、財団は尾瀬の適正利用促進のための指導者育成、ビジターセンターの管理運営、利用者過多(オーバーユース)の解消などのソフト面を中心に取り組んできた。
 97年には湿原保全に関する優れた研究を顕彰する「尾瀬賞」も創設。財団が主催する尾瀬サミットでは、日光国立公園から尾瀬地区を分離させることが提案され、2007年の尾瀬国立公園の誕生につながった。
 設立20年を迎え、財団事務局は、「尾瀬の自然を楽しみ、同時に守ってくれる、いわゆる『尾瀬ファン』の増加につながるような公益性の高い事業を今後もしっかりと続けていきたい」としている。

■広域連携が必要
 地道な取り組みが成果を上げる一方、新しい課題も浮上し、財団をはじめ関係機関が対策を進める。近年は本来生息していないシカが侵入して湿原のミズバショウやニッコウキスゲを食い荒らしたり、湿原を踏み荒らす被害が深刻化。狩猟による駆除のほか、シカの侵入を防ぐ柵も設置した。
 昨年本県で開かれた尾瀬サミットでは、財団理事長でもある大沢知事が外国人旅行者を尾瀬に誘致する方針を打ち出した。世界文化遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」や温泉などとの相乗効果で誘客する考えだが、貴重な自然を守るには、外国人向けのマナーの周知徹底が欠かせない。
 道半ばの入山口の分散化も含め、いずれも広域的な対応が必要だ。保護と適正利用の両輪で、3県が情報や政策を共有・調整する場としての役割も果たしてきた尾瀬保護財団。シカ被害や外国人誘客などへの対応についても、「関係機関が連携して課題に取り組み、尾瀬を次の世代に残していきたい」としている。

◎財源確保が課題
 尾瀬保護財団の運営面では、安定した財源の確保が今後の課題となる。
 財団は群馬、福島、新潟の3県や東電などの出資金に寄付金を加えた約16億円を基本財産として運用しているが、金利低迷により運用益はピーク時の年3500万円から2千万円程度に減少。企業や団体からの寄付金額も伸び悩み、「辛うじて事業規模を維持できている状況」(財団)にある。
 本年度は重点目標に「財政基盤の強化」を掲げ、県内外の企業に積極的に寄付を呼び掛けているほか、各種学術調査など国や自治体からの受託事業を増やし収入の上積みを図っている。
 公益財団法人として、自然環境の保護や植生の回復など取り組むべき事業は多い。アウトドア・登山ブームが続くなか、自然保護の聖地として尾瀬が果たしてきた役割をPRし、収入をしっかりと確保して事業の維持と規模拡大につなげていく必要がある。
 (報道部 伏木充)

◎19日に記念事業
 記念事業は19日午後1時から「これからもみんなの尾瀬であるために」をテーマに、東京都港区虎ノ門の日本消防会館ニッショーホールで開かれる。登山ガイドの橋谷晃さんが講演するほか、尾瀬山小屋組合の関根進組合長や片品山岳ガイド協会の松浦和男会長らがパネル討論に臨む。尾瀬の保全や適正利用に貢献した個人や団体の表彰、写真家の新井幸人さんによる尾瀬の空撮映像の紹介なども予定されている。