無限の表情 尽きせぬ魅力 尾瀬国立公園
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 《オピニオン1000 主張》自然に親しむ運動 山歩きは余裕持って 元尾瀬ガイド協会長 塩田政一さん(72)
2015/07/26掲載
元尾瀬ガイド協会長 塩田政一さん(72)
元尾瀬ガイド協会長 塩田政一さん(72)
 学校が夏休み期間に入り屋外で遊ぶシーズンになった。21日から来月20日までの1カ月間、環境省の「自然に親しむ運動」が展開されている。来年の「山の日」施行を控え、元尾瀬ガイド協会長の塩田政一さんは、余裕を持った自然の楽しみ方を提案する。
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 尾瀬を中心に山や自然を案内するガイドを続けている。近年は中高年の登山者が増えた。歓迎すべきことだが、もう少し余裕を持って滞在してもらえたらと思うことが多い。
 尾瀬で鳩待峠から下っていくと、息を切らせながら登ってくる人に出会う。山の鼻から鳩待峠に戻るときも多くの人に抜かれるが、ペースに無理があるのか、ほとんどは途中で休んでいるところで、こちらが追い付いてしまう。ゆっくりと歩くこと自体を楽しみとしてほしい。
 特にツアーは出発時間が決まっているので、慌てる人が多い。尾瀬で入山から4時間ほどしか滞在しないと聞くと、本当に楽しめたのかなと思う。山の天候は急変しやすいが、悪天候でも遠方から訪れた人は「せっかくここまで来たのだから」と、無理をして入山する例が少なくない。雨が降ると木道は滑りやすい。けがや病気など尾瀬での事故によるヘリコプターの出動は、ことし前半で既に昨年分を超えている。
 参加者もツアーやガイドにお任せでなく、下調べをしてから行くといい。地形や植物の名前など自分で調べれば、現地での楽しみが増えるはずだ。
 登山ブームの中で「日本百名山」の踏破に挑む人も多い。しかしピークハント(登頂)にこだわるあまり、山本来の魅力がないがしろにされている気がする。
 例えば地元の皇海山は、深田久弥の著作では栃木県側から入り山荘で2泊するルートが示されている。現在は沼田側からの短いルートで入山する人がほとんどだ。時間や体力をなるべく使わずに登頂できるが、道中を楽しむ登山があってもいいのではないか。
 来年から8月11日が「山の日」になることで、群馬の山も都会の人の関心が一層高まるだろう。まずは群馬の人に興味を持っていただきたい。谷川岳のような険しい山に挑戦するばかりがアウトドアではない。身近な丘陵や森林を散策するだけでもいいのだ。地元の自然の魅力に気付いてほしい。
 (取材・構成 正田哲雄)
 しおだ・まさかず 栃木県出身。ぐんま森林インストラクター会長。NPO法人片品・山と森の学校代表。尾瀬保護財団評議員。日本山岳ガイド協会認定ガイド。第21期委員。片品村鎌田
2015・7・26