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至仏山登山道 3区間でルート変更 調査専門委最終報告 新たな負担、時期不透明
2013/04/05掲載
尾瀬国立公園の至仏山の登山道の在り方を検討してきた至仏山環境調査専門委員会(委員長・小泉武栄元東京学芸大教授)は4日までに、植生の荒廃が著しいとして、ルート変更の検討対象となっていた3区間で、迂(う)回ルートを示す最終報告をまとめた。各区間を所有管理する東京電力や尾瀬保護財団などは今後、変更を検討するが、費用などの面から実行時期は不透明。現登山道が継続利用されると新たな荒廃を引き起こし、登山道閉鎖につながる可能性もあるため、関係機関は難しい判断を迫られる。
迂回ルートが示されたのは尾瀬ケ原から登り専用となっている東面登山道の至仏山山頂直下と、鳩待峠と山頂の間にあるオヤマ沢田代周辺、小至仏山南面の3区間。ルート変更後の新しい登山道はいずれも、岩石が露出したり、ササに覆われるなど植生への影響が最小限になると見込める場所になる。
迂回ルートはワイヤとばねによるつり木道など新工法の導入を前提としており、高い技術が求められ、新たな負担となる。急斜面を登ったり、狭い尾根を歩くなど危険度が増す場所があるほか、尾瀬ケ原を見下ろす撮影スポットとして人気の三角ベンチがルートから外れ、現道より登山者の快適さや安全性を損ねる可能性がある。
専門委は現道を改良する場合と迂回ルートの利用で、環境に及ぼす影響を比較。現道を改良した場合、至仏山の登山道沿いで唯一の湿原であるオヤマ沢田代では、横断する木道に水が集まり、自然回復は見込めない上、小至仏山南面と至仏山山頂直下は、踏み付けによる植生荒廃や土壌の浸食が拡大するとした。
至仏山をめぐっては、財団が2002年、保全緊急対策会議(現・保全対策会議)を設置。会議の下部組織である専門委は地質や植物の専門家ら9人で構成し、09年度から登山道の在り方を検討してきた。東電は「示された新たな登山道や新工法について今後検討を重ねながら、引き続き至仏山の保全に努めたい」とコメントしている。
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