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尾瀬シカ被害深刻 湿原存亡の危機 生息数最多120頭 環境省調査
2012/06/15掲載
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シカに荒らされて水田のようになった湿原 |
尾瀬国立公園の尾瀬ケ原のシカが増え、湿原が荒れる被害が深刻化している。環境省が尾瀬ケ原で5月末に行った調査で、2001年に調査を始めてから最多の約120頭の生息を確認。同省などは2009年から特別保護地区内でも捕獲を始めるなど対策をとってきたが、山小屋関係者やガイドらは「このままでは尾瀬の貴重な自然がなくなってしまう」と危機感を強めている。
片品山岳ガイド協会の松浦和男会長(71)は6月上旬、東電小屋から東電尾瀬橋に向かう途中、木道脇の湿原がシカに踏み荒らされたり掘り起こされ、水田のようになっているのを見つけた。「案内していた登山客に、尾瀬で唯一、ミズバショウとザゼンソウが共演する場所で、今が1番いい時期です、と説明しようと思った矢先だった。こんなことは今までなかった」と肩を落とす。
東電小屋によると、5月上旬ごろから毎晩、10頭ほどが出没。小屋のすぐ前にも大規模なかく乱地がある。スタッフは「ここ2、3年で被害が目立つようになったが、今年は特にひどい」と嘆く。
環境省は「尾瀬沼ではシカの個体数は減少傾向にあるが、尾瀬ケ原では増えている」と推測する。
尾瀬では1990年代半ばからシカの被害が確認されるようになった。ニッコウキスゲやミツガシワなど植物の食害や湿原のかく乱が拡大したことから、2009年に「シカの排除」を最終目標とした管理方針を策定。環境省が中心となって、侵入遮断柵を設置したり、特別保護地区内や周辺地域で捕獲を行っている。
しかし、山小屋関係者やガイドによると、昼間にシカを目撃するようになり、ミズバショウなど食害に遭う植物の種類が増えている。
尾瀬山小屋組合の関根進組合長(67)は「このままでは尾瀬の自然が全滅してしまう。山小屋組合が先頭に立って、関係者に一刻も早い解決策をとるよう働き掛けを強める」と話す。環境省も有効な捕獲方法について協議を進めているとした上で、「関係者と連携した対応を取っていきたい」としている。
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