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尾瀬のシカ 10年で3.4倍、305頭 対策協が生息数調査 湿原内外 植生被害深刻に
2009/01/24掲載
環境省の尾瀬国立公園シカ対策協議会が二十三日、さいたま市の同省関東地方環境事務所で開かれ、シカの目視確認による生息数調査の結果、昨年は推定で十年前の三・四倍となる三百五頭に増えていたことを明らかにした。掘り起こしや食害などの植生かく乱も御池田代(福島県桧枝岐村)で八年前の三・五倍(〇・二ヘクタール)に広がり、シカの被害の深刻さがあらためて浮き彫りになった。
同省はこの日、特別保護地区内での捕獲実施に向けて「シカ管理方針」の改訂案を提示、年度内決定に向け、出席者から意見を募った。
尾瀬では一九九六年に初めてシカによる植生被害が確認されて以来、ニッコウキスゲなど尾瀬を代表する植物への影響も懸念されるようになった。もともといなかったシカが生活圏にすることで、生態系バランスの崩壊が指摘されている。
空撮などの調査結果から、植生かく乱による湿原の経年変化についても報告。尾瀬沼近くの大江湿原(福島県桧枝岐村)や尾瀬ケ原の見晴地区(同)では、湿原が傷つき、穴の開いたようになった面積が増加した。湿原以外にも、林内に自生するオオバユリやサンカヨウなどにも被害は広がっていた。
「シカ管理方針」の改訂案には、出席者から「数値目標を盛り込めないか」「越冬地の解明が不可欠」「環境省が主体的に捕獲に対応してほしい」などの意見があった。
また、同省が試験捕獲と移動経路の遮断などを目的に昨年十一月から、奥鬼怒林道沿い(片品村戸倉)に設置したネット状の柵の成果についても説明。柵を利用した捕獲頭数は三十五頭で、このうち三頭に発信器を付けて移動経路の解明を進めているという。
同協議会は、同省と本県など尾瀬を抱える自治体や研究者などで構成。尾瀬のシカ被害の把握や予防対策などを議論している。
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