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声楽家・ピプノセラピスト  永井 隆子(太田市寺井町)



【略歴】武蔵野音大声楽科卒。NHKカルチャー前橋講師。演奏活動と合唱指導の傍ら、ライフワークとして「インナーチャイルドの癒やし」、「前世セラピー」に取り組む。


音楽祭に参加して



◎「本当の自分」に再会



 はじめまして。これから1年間、読んで下さる方との出会いの場として、大切に書いていきたいと思っています。

 さて今回は、10月に私の地元である太田市の強戸地区で開催された「Go!Do音楽祭」に参加して感じたことをお話しさせていただきます。

 このイベントは、強戸行政センターで毎年行われている文化祭の前夜祭として、また、音楽やダンスを媒体として「みんなが仲良く、みんなが元気に暮らせる街」を実現していこうと、初めての試みとして行われたものでした。

 立ち上げの第1回の会議では、ほとんどの場合がそうであるように、前例のない取り組みに対して懸念の声があがりました。もっともなことです。この企画はこのまま流れてしまうのではないか、とも思われました。

 ところが2回目の会議、全体のシナリオが具体的に紙面に提示されたことがきっかけで、実行委員一人一の目に、熱い“炎”が宿り始めたのです。気づくと皆、それぞれの肩書や本業を忘れてしまうくらい一つの“夢”に向かっていました。

 さらに、本番当日が台風という想定外の事態により、地元小学校との深い絆が生まれ、その体育館での盛り上がりは格別なものとなりました。誰もが日常を忘れました。

 年齢を重ねるにつれ、世の中の常識やしがらみを優先しなくてはならないのが私たちの日常ですが、そうしていく中でいつの間にか「本当の自分」を忘れていき、さらには「本当の自分を忘れている」こと自体に気付かなくなっているのではなでしょうか。

 人間という生き物は社会に生きているために、思う以上に、他人から見た自分を「本当の自分」だと思い込んでいる気がします。例えば、「~さんちの長男」だったり、「~さんの奥さん」あるいは「~会社の社長さん」「お年寄り」「いまどきの若者」「おとなしい人」「元気な人」など…。

 そして知らず知らずのうちに「他人から見た自分」を演じてしまっているのかも知れません。

 今回、この「町おこし」とも言えるイベントに集った全ての老若男女の目には“炎”とまでいかないまでも、キラキラと輝くものが宿っていました。私にはその輝きが「本当の自分」に再会できた喜びの印(しるし)のように見えました。

 子供のような心に帰って一瞬一瞬を喜び、楽しめた時、私たちは本当の自分に再会できるのだ…と確信しました。本当の自分に出会えたキラキラの目を世界中にあふれさせる第一歩は、町おこしから始まるのかも知れません。








(上毛新聞 2010年12月29日掲載)