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◎継続した支援が必要 「就職できない大学生10万6千人」。今春の大学卒業者の就職状況として新聞等で発表された数字である。さらに、卒業できず、または就職できずに敢えて留年した学生が、10万人程度いると言われている。このうちの就職留年者の数は正確に把握できてはいないが、前述の10万6千人と合わせると、15万から19万人の学生が就職できなかったと推測することができる。今春の大学卒業予定者56万人のうち15万人以上が就職できなかったという事態は、もはや看過できない状況であるといえよう。 この原因として最初に思い浮かぶのは、リーマン・ショックに端を発した不況の進行ということである。確かに大学生の求人倍率はリーマン・ショックの年である2008年度の2・14倍から、09年度1・62倍、10年度1・28倍と下がってきているので、不況が大きな原因であることは間違いないであろう。 しかし大学の就職支援の現場にいて課題として感じることは、学生の職業意識の低さと、その醸成の困難さということである。アメリカの社会学者であるマーチン・トロウが、大学に進学する高校生が50%を超えると大学はユニバーサル・アクセス型となり、極度の多様性を持つようになると予測しているが、日本の大学は、まさにこの段階に入ってきているのである。皆が行くから自分も大学へ、といった動機で入学してくる学生も少なくない状況になっている。 また、生徒を大学へと送り出す高校においてもキャリア教育は実施されているが、将来の生き方を踏まえたうえでの進学指導というところまで徹底する余裕がないのが現状であろう。 しかし、小学校から大学までの学校教育に一貫して流れるべき目的は、社会で共生できる人材の育成ということではないだろうか。そうであるとするならば、各段階の学校において、発達に応じた広い意味でのキャリア教育を体系的に実施し、次の段階にある学校がそれを引き継いだ形で、またキャリア教育を実施する、という流れを作るべきではないだろうか。学校に限らず、組織というものは自己の最適を求めてしまい、全体としての最適を見失ってしまうことが多い。 大学では、次年度からキャリア教育を正課の授業として実施することが義務付けられた。また最近は、緊急措置として各大学が学生の就職相談に対応するキャリアカウンセラーを雇用することに対する補助金支給も開始されている。 しかし、人を育てるためにはある一定の時期における手厚い支援ではなく、継続した体系的な支援が必要なのである。その意味で、少なくても生徒の成長を志向した、実質的な高大連携が喫緊の課題であると考えている。 (上毛新聞 2010年12月18日掲載) |