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◎能力は十分発揮できる 2000年5月、関西空港を飛び立ったベトナム航空機はタンソンニャット空港へ着陸。機内から降り立つと熱い空気が押し寄せてきて南国に来たことを実感しました。 ベトナム戦争でアメリカ軍がジャングルを枯らし、ベトナム解放戦士を追い出すために撒いた枯葉剤の中のダイオキシンの薬害で接合して生まれたベトちゃんとドクちゃん。日本の多くの人の援助と協力によって分離手術は無事成功しました。 その援助の中心になっていた藤本文朗教授(当時は滋賀大学教授)の「西田君は3月に定年退職したので暇ができたろうから、ホーチミン市の教員養成大学で集中講義をしてほしい」との依頼で、費用はすべて自費で2週間講義に行きました。 講義の内容は自閉症についてでした。当時ベトナムでは自閉症を表す言葉すらなく、藤本先生らの働きかけで初めて自閉症のベトナム語が作られました。実際は、自閉症は存在したのですが、障害としての認識がなく、放置されていました。日本語をベトナム語に通訳しての講義ですので、通訳が必要でした。 またホーチミン市の養護学校で、実際に障害のある子供たち相手に私も通訳付きで授業をしました。通訳はベトナム在住の日本人で渋川女高卒の北村さんで、私は渋川高卒で偶然にも同じ市内で学んだ者同士が異境の出会いで大変感激しました。 ベトナムにも軽度発達障害のADHDやLDや自閉症・アスペルガーの子供たちや成人の方もいますので、大学での講義と公開授業に3年間毎年訪れました。 同じように現在日本でも知的には遅れはないが、行動面や社会面に多くの困難を抱えておられる子供や大人の人がおられます。今までも日本には知的に高い能力を持つが軽度発達障害のため学校生活や社会生活で困難を抱えていて能力を十分に発揮できない方がたくさんおられました。私はこれらの方が持っておられる力を十分に発揮できるためのヒントや実践報告をこれまで本に書いたり講演してきました。 軽度発達障害者で十分に才能を発揮できたADHDの人も多いのです。エジソン、モーツァルト、織田信長、坂本竜馬もそうだったと指摘する人がいますし、ビル・ゲイツ、黒柳徹子さんも著書の中で書いています。 またLDでは作家のアンデルセン、科学者のアインシュタイン。アスペルガーではニュートンの名前がよく伝えられています。この人々からたくさんの恩恵を受けている私たち。発達障害児者から私たちが学ぶことは非常に多いのです。軽度発達障害の子育てや教育実践での教訓は、次回から報告します。 (上毛新聞 2010年11月29日掲載) |