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スポーツコーディネーター  藤口 光紀(東京都大田区)



【略歴】旧粕川村出身。慶応大卒。サッカー日本代表、浦和レッズ社長を経て、現在日本スポーツコミッション評議員、日本サッカー協会参与、新島学園短大客員教授。


情報処理能力



◎自分で判断する習慣を



 2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会は、スペインが華麗なパスワークを駆使して見事初優勝に輝き、念願のワールドカップを手にした。今回のスペイン代表は本当にうまさと強さを兼ね備えたチームで、サッカー界に新しい時代が到来したことを告げる大会であった。

 前回のドイツ大会優勝のイタリア、準優勝のフランスが共にグループリーグ敗退。サッカーの母国イングランドもベスト16、優勝候補のブラジル、アルゼンチンもベスト8止まり。サッカー先進国と後進国の差が小さくなったと言える。日本、韓国、アメリカがベスト16入りしたことからも理解できよう。

 コンピューター等電子機器の発達により情報の共有化が図られ、トップレベルのサッカーを世界中どこに行っても目にすることができ、試合分析、新しいトレーニング方法等も瞬時に情報を得ることができるようになったことも、後進国の発展に大いに寄与しているものと思う。

 しかし、便利さに人間の能力が追い付いていないとマイナスに働くこともある。現代社会は情報があふれている。必要な情報ばかりではなく、余分な情報も勝手に飛び込んでくる。情報は必要であるが、情報をうまく処理できない人は情報が多すぎると適切な判断ができなくなる。パニックに陥る恐れがある。時には情報がない方が適切な判断をしていることもある。数多くの情報の中から、必要なものだけをピックアップして判断できることがベストであるが、情報処理能力に応じた情報量ということを考えていかなければならない。

 情報処理能力は日常の生活の中でも培われるものと思う。些細(ささい)なことでも自分で判断する習慣を身に付けることにより、今必要でない情報を整理することができるようになる。

 サッカーの試合中、フリーで抜け出してGKと1対1の場面で、シュートをゴールの枠の外へけりだすとか、GKに防がれてしまう光景をよく目にすると思う。フリーで何でもできることから頭の整理がつかずにプレーした結果である。日ごろの練習で場面を想定して何度も取り組み、情報処理能力を高めておけば試合でも落ち着いて対処しゴールに結びつけることができるのである。

 指導者も選手の能力をよく把握して指導しないと、情報過多により選手が処理できずにチーム力が向上しないことはよくあることである。情報を受ける側と供給する側双方の問題であることを認識しなければならない。






(上毛新聞 2010年11月17日掲載)