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◎居心地良い所と再認識 この欄を1年間書かせていただいたことで、児童生徒が学校で楽しく過ごす場所はたくさんあるけれど、とりわけ学校図書館は居心地が良く便利な場所の一つであると、あらためて感じた。 それは…。あらゆる分野の本がたくさんあって、好きなだけ読める。机で落ち着いて、カーペットで友人と、ソファでゆっくり、それぞれが思い思いのスタイルで読める。求める本がなければ、学校司書に別の図書館から取り寄せてもらうこともできる。 新聞も雑誌も辞書・事典もインターネットも自由に使えるので、調べ物はいつでもできる。新聞も遡(さかのぼ)って見ることができる。学校司書に聞けば調べ方も本も教えてくれる。探究型の学習ができるということだ。 学校図書館には知的な楽しみがある。図書委員会主催で新聞記者を招いての講演会に参加できる。絵画を楽しみ、掲示物やプリント、イベントなどで調べ方・レポートの書き方などを知ることができる。また時季をとらえたコーナー展示は人気が高い。読書週間イベントでの、しおりやブックカバー配布は知を刺激しているに違いない。 いつ行っても、何でも気軽に聞ける学校司書がいる。勉強に疲れたら、窓の外をぼんやり見ていてもいい。「少し時間ができたから、行ってみようかな」と立ち寄れる。要するに、子どもたちの安心できる居場所なのだ。 コミュニティーの役割も果たす。昼休みにほかのクラスの子と交歓する。待ち合わせにも利用する。読んだ本の感想や好きな作家の話をし合う。居合わせた先生とお話ができる。 それに生活での疑問も解決できる。「レポートと小論文、どう違うの?」「おじいちゃんが認知症の傾向です。介護の体験談がありますか?」。子どもたちが考えて問題を解決して成長していく場所だ。校外でも社会の情報基盤である公立図書館を上手に使えるように育てる役目もある。 こうした学校図書館の機能を果たすには、専門的な知識や技術が必要であり、その地道な仕事は時間もかかる。どうしても学校司書の配置が必要となる。 ところが、県の過半の地域で、小中学校図書館は図書館担当職員を配置していない(平成20年度文科省および群馬統計年鑑)。司書教諭は担任も授業もあり、図書館に行くことさえできない。これでは子どもにもっとも身近であるはずの学校図書館は閉ざされることになる。さらに、学校に図書館担当職員を配置しない自治体と図書館未設置自治体はほぼ重なり、その地区の教育上の不利益はいかばかりか。 子どもたちの未来は大人がどう道をつくっていくかにかかっている。人を育はぐくむ群馬県を願い、みなさまに感謝をこめて筆を置く。 (上毛新聞 2010年11月13日掲載) |