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◎新しい世界のドア開く 美しいダイヤモンドが紛争の引き金となったり武器輸出の対価として闇取引されることがあることを、どれだけの人が知っているだろうか。数カ月前のことになるが、たまたまテレビでエシカル・ジュエリーを制作している白木夏子さんのドキュメンタリーをみた。エシカル・ジュエリーにはフェアトレードやリサイクルなどの人権や地球環境に配慮した素材が用いられている。まだ若い女性が世界のために何ができるかを真剣に考え、その答えとしてこの仕事に情熱的に取り組んでいる様子に感心した。 しかし、私がそれ以上に注目したのは白木さんがこのような歩みを始めたきっかけについてだった。彼女は短大生の時に学校でフォトジャーナリストの桃井和馬さんの講演を聴き、それに大きな影響を受けたという。この事実は私にとってとてもうれしく大きな励ましだった。なぜならば私の働く新島学園短大でもこの秋、キリスト教文化週間として今月16日に桃井さんを招き講演会を行うからだ。 キリスト教教育の果たすべき役割はいろいろあるだろうが、わたし自身は学生たちがそれぞれの命を輝かして人生を歩みだすために、新しい世界へとつながるドアを開き、そこで待っている出会いや経験を示してそっと彼らの背中を押すことがとても大切ではないかと感じている。そのためにこの秋はこの人しかいないとお呼びしたのが桃井和馬さんだった。 桃井さんは、これまでに世界の140カ国を訪れ、「紛争」「地球環境」などをテーマに撮影・取材されている太陽賞受賞のカメラマンだ。太陽賞と言えば、文学でいえば芥川賞や直木賞に当たる。桃井さんの名前を知らなくても「国境の境目が、生死の境目であってはならない」とのキャッチコピーが印象的な国境なき医師団のCM(ACジャパン支援キャンペーン)は皆目にしているはずだ。 短大の2年間はあっという間に過ぎ去ってしまう。在学中はともかく、卒業後のひとりひとりの歩みを傍で支えることは物理的に難しい。私たちにできるのは学生たちのこれからを信じ、「あなたたちは世界のために意味のある生き方ができる」「世界はあなたの存在を必要にしている」と示し、そこに通じるドアを開くことだ。くしくもテレビのドキュメンタリーで桃井さんの講演を聞いたひとりの学生の10年後を見ることができ、私たちがおこなおうとしている教育に確信を深めた。 新島短大の教育モットーは聖書からとられた「真理・正義・平和」だが、その内の「真理」は「自分の使命を探求すること」と理解している。桃井さんの講演は一般にも無料で公開される。地域の方々とも共に命の意味を考え分かち合う新島短大であり続けたい。 (上毛新聞 2010年11月11日掲載) |