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NPO法人環境システム研究会理事長  横島 庄治(高崎市吉井町)



【略歴】長野県上田市出身。元NHK解説主幹。元高崎経済大教授。群馬県総合計画策定懇談会委員。高崎市都市計画審議会会長。専門はまちづくり、交通政策、観光開発。



北関東道の全線開通



◎東京圏からの自立へ



 待望の北関東自動車道(以下北関東道)の全線開通まであと半年となった。

 高崎を起点に栃木県を通って茨城県のひたちなか市に至る全長150キロのこの高速道は、カーブやトンネルが少なくて走りやすく、最高時速が全線で100キロと高速設定されている。

 さて、高速道というと、関越とか常磐など都心をスタート地点に各方面に延びる放射道路がまず連想される。

 これに対して、東京圏の場合は都心の中央環状、15キロ帯の外郭環状、50キロ圏の圏央道の三つが環状道路として位置づけられており、来年全線開通する北関東道は、さらに外側に配置される第4の環状道路ともいえる。

 しかし、内側のこれら三つの環状道路が放射道路との「たて・よこ連携」を強化し、合わせて東京圏の渋滞緩和を主な目的にしているのと違って、北関東道は「3県の新しい地域連携と東京圏からの自立」という、これまでなかった新しい圏域編成への貢献が期待できる。

 北関東3県は、これまで共通して東京圏へのサポートを前提に発展・成長してきた側面が大きい。「まずは東京へ」という流れに沿って労働人口が流出し、工業・農業産品が出荷され、飲料水や電力の供給基地となってきた。

 しかし、時代の変化とともにあらゆる分野で価値観が変わり、構造が組み替えられるのに伴って、北関東3県の持つ優れた自然条件、経済性や利便性、快適性が見直され、東京圏に頼らない上質の生活圏、地力のある経済圏を目指して、現実的に取り組みが始まっている。

 新しい高速道の建設が各地で延び延びになるなかで、北関東道だけが、例外的ともいえる順調なペースで全線開通にこぎつけた背景には、こうした新しい感覚があったことは確かである。

 従って「便利になった」「海が近くなった」といった程度の使い方では、本来の価値を生かすことにはならない。

 あくまでも例示ではあるが、医療面で群大、自治医科大、筑波大の各付属病院が連携すれば、全国トップレベルの先進医療を集約することが可能である。

 群馬交響楽団を中心に演奏集団、音楽ホールが協働することで、わざわざ東京に行かなくても一流の音楽が楽しめる北関東音楽文化圏の形成も夢ではない。

 さらに物流体系も事情は一変し、成田や茨城空港を利用する航空貨物、常陸那珂港中心の内航海運、新潟港経由のアジア物流などの展開が同時進行する時代も間近になろう。

 北関東道は群馬、栃木、茨城3県にとっての新時代の幕開けといってもいいだろう。









(上毛新聞 2010年11月10日掲載)