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◎「トライ」と「修復」が鍵 就労に立ち止まる若者の中で、失敗が怖いという訴えは多い。失敗による引け目から上司との接触が減っていって人間関係に支障が出たり、失敗を恐れるストレスから出社困難になってしまったことがあったりして「失敗=終わり」「失敗=恐怖」という認識が膨らみ過ぎてしまうことがある。 失敗に対しての恐怖心が不健康に増えてしまうもとには大きく二つあるように感じている。一つは「トライ」感覚の薄さ、もう一つは「修復」への信頼感の低さだ。 まず一つ目の「トライ」について。何かをやってみてうまくいかなかった時に、すぐに失敗だと判断してしまう傾向が強い。退職理由をお聞きする中で「失敗というよりトライしているところだろうに、その時点で失敗だと判断するなんてもったいないな」と感じることも多い。いわゆるPDCAサイクルの真っただ中で、「トライの最中」なのに、そうは捉(とら)えず、自分では失敗だと、早々にジャッジしてしまうのである。仕事も人付き合いも試行錯誤であり、正解はない。方法はいくつもあるかもしれない。このやり方がだめなら別のやり方をしてみる、というトライの感覚が大事だ。 二つ目は修復への信頼感について。何か失敗してしまった時、修復できるという感覚が低い傾向がある。失敗したらもう後はないと考える―これは大変苦しい。失敗してしまったとしても、修復の可能性はある。責任を取らなければならない局面もあるだろうが、取り返しがつかないわけではない。間違えたとしても、リカバリーが可能である。言葉を紡いで足りなかったら付け加えればいい。人とちょっとぎくしゃくしても、もう一度仲良くなることもできる。何かあった後にどう取り組むかが大事だ。 実は、社会の中で見られているのは、失敗したことそのものよりも、失敗した後の行動とも言える。失敗したことにいつまでもこだわったりとらわれていたりすることを、会社も上司も望んではいない。その失敗をどうフォローし、次にどう生かしていくのかが真に問われていることだろう。人間関係においても同様である。 これまで、自分自身の経験も含めて若者の就職や継続就労にまつわるトピックを取り上げさせていただいた。貴重な機会をいただき感謝申し上げたい。 最後に一つ。周囲に就労に立ち止っている若者がいたら、相談の有益性をお伝えいただきたい。一度止まった車輪は、動かす時に少し余計に力が必要なため、一人ではそれだけのエネルギーがたまりにくかったり、長い時間がかかってしまったりすることがある。ご本人と一緒に考える相談機関としての役割を、今後もしっかり果たしていきたい。 (上毛新聞 2010年11月4日掲載) |