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NPO法人こころの応援団代表  千代田 すみ子(みなかみ町猿ケ京温泉)



【略歴】東京都生まれ。特養老人ホーム勤務や農業を経験。新潟県中越地震でのボランティア活動などを経て、2005年、本県に移住。心の病のある人の支援活動に取り組む。


こころの応援団



◎参加する勇気を大切に



 このコーナーを受け賜ってから早いもので1年です。そして今回が最後です。今まで、心に病を抱える方々と共に活動する立場で書かせていただきました。私のつたない文章を読んでくださった方々が心の病への理解を深めていただけたとするとうれしいです。

 さて、今回はその理解について具体的にお話ししたいと思います。

 人はよく、気持ちがふさいでいる人に対して、気分転換を勧めます。場合によっては効果的ですが、心に病を抱えた始めた場合は異なります。

 例えば、紅葉シーズンに入った今、山が彩りを増し、私たちは木々の葉の織りなす色に心奪われますが、心の病にかかった当初は、この美しさに気づかないようです。また、たとえ見たとしても全く興味がなく、そんな自分に否定的な感情がわいてしまうそうです。

 買い物も、おいしい食事も、それまで好きだった趣味もすべて興味がなくなるようです。(ただし、病気の種類によっては、逆に興味が旺盛になる場合があります)そんな時、周囲から「気分転換でもしたら」と言われることは苦痛でしかないということを周囲の人は理解してほしいです。

 また、心の病にかかると動きが緩慢になり、思考能力も低下します。そして、意欲も失います。ですから、周囲からすると怠けているように見えます。しかし、そうではないのです。当事者は病気以前の自分のように行動したいのですが、できないのです。

 そんな自分にいらだったり、焦燥感を感じ、再びつらい思いをしてしまうのです。「こんな自分なんていない方がいい」とか「周りに迷惑ばかりかけて申し訳ない」という言葉をよく聞きます。周囲が思う以上に当事者は何とかしたいと思っていることも周囲は理解してほしいものです。

 私ども「こころの応援団」は、この周囲の理解を広げるためにさまざまな活動を展開しています。当事者と一般の方やボランティアとで一緒に行動し楽しむエンジョイ事業もそのひとつです。気分転換を勧めるのではなく、自ら自発的に参加くださるのを待ち、当日は参加くださった勇気を大切に受け止めます。

 ですが、特別扱いはしません。これらのことが机上の勉強では得られない理解の輪を広げてくれます。一緒に活動することで、一般の方はそれまで想像していた心に病を抱える方々への不安が消え、当事者の純粋さや素直さに気づきます。

 私は、このコーナーを担当するにあたって、勇気が必要でしたが、その勇気がたくさんの方々と新たなつながりをもたらし、大変うれしく思っています。今度は読んでくださった皆さんが勇気を出す番です。あなたも一緒に活動してみませんか…待ってます。







(上毛新聞 2010年11月2日掲載)