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◎司法との距離感縮まる 先日、所属する奉仕団体の会員約20名で刑事裁判を傍聴した。何件も覚せい剤の実刑前科のある被告人がまたまた覚せい剤を使用したという争いのない自白事件である。裁判員裁判の対象外で一人の裁判官が担当した。起訴状朗読から即決の判決まで約1時間で刑事裁判の最初から最後まで見ることができた。 会員は皆が刑事裁判を傍聴するのは初めてという人ばかりで、傍聴後「傍聴してみて初めて裁判の仕組みが分かった」「被告人の人生について考えさせられた」「実刑はわかるが、量刑はどうして決めるのか」「裁判官、検察官、弁護士が丁寧に懇々と被告人を諭す様子に感銘した」等々さまざまな感想が述べられた。裁判傍聴は有益だった、勉強になったとの声が圧倒的だったように思う。 裁判は憲法82条で原則公開されており、誰でも自由に傍聴できる。しかし、実際に傍聴した経験のある人は極めてわずかである。近年東京地裁では阿蘇山大噴火氏や北尾トロ氏のような、著名人裁判ウオッチャーだけでなく刑事裁判の傍聴に熱心な一般市民が増えているようだが、東京地裁でも前橋地裁管内でも傍聴席は著名事件以外閑散としている。 裁判員制度や新たな検察審査会制度が始まり、国民の司法へのかかわりが大幅に強まったなかで、司法を知る、裁判を知る機会として刑事裁判を傍聴することの意義はもっと強調されてよいのではないか。百聞は一見に如(し)かず。1回でも法廷の傍聴席に座ってみる、実際に裁判を傍聴してみることで司法、裁判に対する距離感は確実にグンと縮まる。 一人で行くには裁判所の敷居が高いのであれば仲間や知人と連れだって行くのがよい。社会見学先を探しあぐねている各種奉仕団体や地域団体にとってお勧めの見学先である。未来の裁判員候補者である中学生、高校生にとっても法教育の一環としてもっと刑事裁判傍聴の機会を積極的に取り入れるべきと思う。どこの裁判所も玄関を入ってすぐの場所に当日の裁判予定が掲示されている。 また団体傍聴であれば裁判所に事前申し込みをして日程調整する必要がある。裁判所は団体傍聴を歓迎しているようで私たちが申し込んだときは職員の方に懇切丁寧に応対してもらい帰りには裁判員制度のパンフレットやPRグッズのお土産を頂戴(ちょうだい)した。前記のとおり一般の刑事裁判であれば通常1時間で最初から最後まで傍聴できる。 裁判員裁判は朝から夕方までの公判が何日も続くため通して傍聴することは容易でないが、時間のとれる年金生活者の方や休み中の学生にお勧めである。傍聴にあたって定められた規則、マナーを遵守(じゅんしゅ)しなければならないことは言うまでもない。 (上毛新聞 2010年10月27日掲載) |