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前農業・食品産業技術総合研究機構理事・中央農業総合研究センター所長
                               丸山 清明
(茨城県牛久市)



【略歴】前橋市出身。東京大農学部卒。北陸農業試験場(稲の育種)、作物研究所長、北海道農業研究センター、中央農業総合研究センター各所長などを歴任。農学博士。

緑提灯



◎食料自給率を上げよう



 現在の日本は世界中から食材を買い集めて、1億2700万人が食べている。例えば、小麦は、国内生産が約80万トンに対して、輸入は約500万トンである。四方を海に囲まれた日本なのに、水産物の自給率も55%にすぎず、全体として、日本の食料自給率は、カロリーベースで約40%と寂しい状況にある。

 筆者は、農業技術で少しでも食料自給率を上げるように努力してきたが、それ以外に食料自給率を上げる方法がないかと、常々考えてきた。そのひとつが「緑提灯(ちょうちん)」である。

 居酒屋さんで、地場産・国産食材を50%以上使用している店に緑色の提灯を飾ってもらうアイデアである。居酒屋といえば「赤提灯」が定番だが、信号機の赤は止まれ、緑は進めなので、お父さんたち、「緑提灯」に進めという意味である。

 また、店主さんに目標を持っていただくために、緑提灯に星を塗ることを思いついた。国産食材が50%以上ならば星一つ、60%以上ならば星二つ、70%は三つ、80%は四つ、90%を超えたら星五つとした。

 緑提灯第1号は、筆者が札幌に赴任中に、職場の仲間が行きつけの居酒屋の店主さんを説得し、小樽に灯(とも)った。2005年4月であった。以後、筆者の関東転勤後は、緑提灯応援隊をつくり、その仲間にホームページもつくってもらい、応援隊員が居酒屋の店主に話しかけ、少しずつ増えてきた。

 この原稿を書いている時点で、北は北海道・稚内から南は沖縄・波照間島まで、2950店が参加している。群馬県は43店である。なお、緑提灯応援隊員の義務は「もしも赤提灯と緑提灯が並んでいたら、ためらわずに緑提灯の店に入る」の一点である。

 さて、緑提灯運動を始めるときに、星の数をどうやって認証するかを考えた。でも、なかなか名案は思い浮かばなかった。認証したら責任が生じる。遊び心の運動なのに、責任を取らされてはたまらない。

 そこで、星の数は店主さんの自己申告とした。ただし、著しい違反をした店主さんには、反省と書いた鉢巻きを巻くか、丸坊主になって反省してもらうことにしている。参加を申し込まれた店主さんには「星の数の審判はお客さまです」、「正直を重ねて信用を得るのが一番ですね」と書いた手紙を私から送っている。

 読者の皆さん、朝、出勤するときに、「お父さんは、今晩、日本の食料自給率を、向上させるために、頑張るから、帰りが遅くなるよ」と言って、緑提灯のノレンをくぐってはいかがでしょうか。

 問い合わせは、緑提灯事務局(水島明)へ。電話090・3540・5403、akira.mizushima@gmail.com








(上毛新聞 2010年10月20日掲載)