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県立県民健康科学大学長  土井 邦雄(前橋市岩神町)



【略歴】東京都生まれ。早稲田大理工学部卒。1969年からシカゴ大放射線科に勤務し、同大教授を経て同大名誉教授。昨年4月から現職。



心配な日本の将来(2)



◎目標と勇気を持つべき



 40年のアメリカ滞在の後、昨年4月から、私は健康科学大学の学長として着任し、本学を大きく飛躍させ、日本でも一流の、そして世界にも通用する大学にしたいと考え、いろいろな提案をしています。長い間日本を離れていたせいか、日本は大きく変わったと感じていますが、大変気になることもあります。経済環境、少子高齢化、政治改革、国際関係、環境問題、大学改革など多くの困難な問題がありますが、一般国民の生活レベルは、40年前からは大きく改善され豊かな国になっています。そこで、多くの方は現状に満足しているかもしれませんが、本当に困っている方もいるのが事実です。40年前には、猛烈社員と呼ばれた若者たちが“ドイツに追いつけ、追い越せ”との目標と努力によって、現在の日本の繁栄に大きく貢献したと思います。しかし、現在の日本は、目標を失っているように思えるのです。

 日本のテレビ番組を見ていると、評論家などの意見は、一方的な批判が多く、トークショーでは、誰かが批判をすると、次々に、そうだそうだと批判を重ねる場面が多いです。しかし、批判に対する反対意見は、ほとんど聞くことができません。多くの意見は、「足を引っ張り、引きずり落とそう」としているように思えます。建設的な考えや、それを育てようとする幅広い見識の意見の欠如は、極めて残念なことです。これでは、国づくりを進めるのは困難で、首相が毎年交代することになったのかもしれません。

 第2次世界大戦の敗北によって、65年前に新しい国づくりが始まったのですが、経済面や社会の仕組みは、比較的早く立ち上がったと思います。しかし、精神面は回復したでしょうか? 日本人の精神的な強さと勇気は、どこに行ったのでしょう? 玉砕、自爆、特攻隊などの悲劇は、もう二度と起こらないと思いますが、言うべきことを言い、主張すべきことを主張しているでしょうか?

 アメリカで、日本からのニュースに注意していると、一見、日本には自分の意見がないように思えます。特に、どこかの国と対立するような状況では、強い主張や強い意見は、ほとんど表明されたことが無いと思います。尖閣諸島問題は一例です。その理由は、第2次世界大戦の間違いを繰り返さず、どの国とも対立せず、仲良くしたいとの強い希望の現れか、あるいは、勇気の欠如でしょうか? しかし、日本は、今後、先進国として自分の意思を明確に主張し、日本をどのような国にしたいかを勇気をもって考え、目標を決めるべきではないでしょうか。これからの日本の将来を、日本人全体が考え、決心する必要があるのではないでしょうか。






(上毛新聞 2010年10月18日掲載)