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県鳥獣被害対策支援センター所長  久保寺 健夫(高崎市井出町)



【略歴】11970年に県庁に入庁、自然環境課、蚕糸園芸課などで勤務。2010年4月から現職。人や農作物に害をもたらす鳥獣の対策を担当している。



今後の鳥獣被害対策



◎簡単で効率的な方法を




 記録的な猛暑もやっと峠を越え、実りの秋本番が近づいてきた。しかし、ニホンザル、イノシシ等の農地への出没もこれからピークを迎える。

 「猿も命がけ、今年は猿に軍配が上がった。…去年より被害が増え、来年は危ないところにはトウモロコシも花豆もまかないことにする」。地域で精力的にニホンザルの追い払いをしている方のブログでこんな文章が目にとまった。

 収穫確保に向けてさまざまな対策を講じても、被害が減らない場合、作付けをやめてしまう事例が多くなってきている。

 また、ある方のブログには、「実りの秋。そうじゃない。よく写真を見て」とイノシシに食べられ、稲穂の先のなくなった写真が載っていた。

 仕事柄、各地で被害にあった田畑や果樹園の調査、また地域の方々から話を聞く機会が多いが、県内ではこれら野生動物の生息する地域は確実に広がってきており、そこに住む住民とのあつれき・農作物被害も拡大している。二つのブログのような事例は、県内あちこちで見聞きする。

 それでは、被害対策の現状はどうなっているのか。

 侵入防止柵等を設置し、農地に入れないようにして防ぐ対策では、ニホンザル、イノシシなど、獣種ごとの生態等に対応した新たな技術・方法の研究・開発が続けられている。

 当センターでも作物や地域の実情に合わせた対策の実証を行っている。この場合の基本は設置費用・耐用年数と作物販売金額との比較、妥当な投資費用であるかの検証が常に必要と考えている。

 「この地域にはいなかった動物だから、全部捕獲してほしい」。これは、被害地域で皆さんからよく出される話であるが、捕獲し加害する頭数を減らす対策も、被害を減らす重要な手段である。これを実施するためには、各市町村ごとに組織されている有害鳥獣捕獲隊の皆さんによる銃器による捕獲と、オリ・ワナによる捕獲の2通りがある。しかし、銃器による捕獲は危険が伴うことから、発砲できる範囲と時期が限られているし、オリ・ワナについては、捕獲効率は決して高くない。これらのことから、生息数を急激に減少させる対策は非常に難しい課題である。

 なお、このほかニホンザルは群れを作り、誘導域内(縄張り)を動き回っており、このため、発信器をつけた個体を監視し、その動きに合わせた追い払い・群れ管理が可能であり、県内でも各地で地域の皆さんによる追い払いが行われている。

 県内での本格的な被害対策は、まだまだ始まったばかりであり、今後、だれでも簡単に取り組める効率的な方法を検討していきたい。







(上毛新聞 2010年9月29日掲載)